EU規則336/2006のISMコード適用範囲と除外対象の判定順序

加盟国の港を結ぶ定期航路のパナマ籍一般貨物船にも、EUのISM規則が適用される場合があります。運航形態と、総トン数500トンの基準などの除外条件を併せて確認します。
SOLASは国際航海に従事する船にISMコードを適用します。EU規則336/2006は所定の国内航海と定期運航にも範囲を広げ、第3条で除外船も定めます。
そのため適用の有無を見る作業には順序があります。広げた一覧に掛かるかを先に見て、掛かったら 除外の一覧にその船の名があるかを見ます。二つの一覧を混ぜると答えが裏返る船が出ます。
第3条は船だけでなく、その船を運航する会社を一緒に呼びます
- This Regulation shall apply to the following types of ships and to companies operating them: (a) cargo ships and passenger ships, flying the flag of a Member State, engaged on international voyages;
最初の文が適用の相手を二つ書いています。船舶の種類と、その船舶を運航する会社です。船が一覧に 入れば会社も一緒に入ります。この構造が後の第4条と第5条につながります。
(a)はSOLASがすでに押さえている場所をそのまま移した枠です。旗国が加盟国で、航海が国際航海 です。二つの条件がそろって掛かるので、この枠だけを見れば先のパナマ籍船は入りません。
国内航海と定期航路は旗国を問わずに入ってきます
(b) cargo ships and passenger ships engaged exclusively on domestic voyages, regardless of their flag; (c) cargo ships and passenger ships operating to or from ports of the Member States, on a regular shipping service, regardless of their flag; (d) mobile offshore drilling units operating under the authority of a Member State.
(b)は国内航海だけを行う貨物船と旅客船です。条件がexclusively on domestic voyagesであり、
旗国はregardless of their flagです。国際航海という敷居がここで消えています。
(c)は加盟国の港に出入りする定期航路の船です。ここでも旗国を問いません。付く条件は
regular shipping serviceの一つだけです。先のパナマ籍船が掛かる枠がここです。
(d)は加盟国の権限の下で運用される移動式海洋掘削装置です。旗国ではなく権限を問います。
三つの枠を並べて置くとEUが何をしたかが見えます。国際航海という敷居を外し、代わりに加盟国と 接する点を三つに増やしました。国内航海、定期航路、加盟国の権限です。
除外の一覧は前で広げたものを再び切り取ります
- This Regulation shall not apply to the following types of ships or to the companies operating them: (a) ships of war and troopships and other ships owned or operated by a Member State and used only on government non-commercial service; (b) ships not propelled by mechanical means, wooden ships of primitive build, pleasure yachts and pleasure craft, unless they are or will be crewed and carrying more than 12 passengers for commercial purposes; (c) fishing vessels; (d) cargo ships and mobile offshore drilling units of less than 500 gross tonnage; (e) passenger ships, other than ro-ro passenger ferries, in sea areas of Class C and D as defined in Article 4 of Directive 98/18/EC.
除外は規則の全体を切ります。文がThis Regulation shall not applyだからです。そのため除外の
一覧に名があれば、後の第4条から第6条までも来ません。
五つの行のうち二つには、除外が再び外れる条件が付いています。
| 除外される船 | 除外が外れる条件 |
|---|---|
| 軍艦と軍隊輸送船、加盟国が所有または運航し政府の非商業的業務にのみ用いる船 | ありません |
| 機械で推進しない船、原始的な構造の木船、プレジャーヨットとプレジャークラフト | 乗組員を乗せ、商業目的で12名を超える旅客を運べば除外が外れます |
| 漁船 | ありません |
| 総トン数500トン未満の貨物船と移動式海洋掘削装置 | ありません |
| Class CおよびD海域の旅客船 | ro-ro旅客船はこの行では外れません |
トン数で外れる船と海域で外れる船が分かれます
除外の一覧の(d)は貨物船と移動式海洋掘削装置だけを書いています。旅客船はこの行にありません。 そのため総トン数がどれほど小さくても、旅客船はトン数では外れません。
旅客船を外す行は(e)であり、その行が問うのはトン数ではありません。海域の等級と、ro-ro旅客船 かどうかです。Class CおよびD海域の旅客船が外れ、ro-ro旅客船はその除外から再び抜け出します。
先のパナマ籍船で順序をたどると、こう終わります。第1項の(c)に掛かって一覧に入り、第2項では 漁船でも軍艦でもありません。総トン数が500トン以上なら(d)にも掛からないので規則の中です。 総トン数が500トン未満なら(d)が貨物船を抜き出すので規則の外です。同じ航路を同じ間隔で 通っても、トン数の一行で分かれます。
会社にはA部が掛かり、証書と検証は加盟国がB部で行います
Member States shall ensure that all companies operating ships falling within the scope of this Regulation comply with the provisions of this Regulation.
第4条は遵守を確保する責任を加盟国に置きます。会社が受ける執行は加盟国を通って来ます。
The ships referred to in Article 3(1) and the companies operating them shall comply with the requirements of Part A of the ISM Code.
第5条が指すのは第3条第1項です。第2項ではありません。除外の一覧は規則の全体の適用を切るので、 その一覧にある船はそもそも第5条まで来ません。
For the purposes of certification and verification, Member States shall comply with the provisions of Part B of the ISM Code.
ここで義務の受け手が変わります。Part A of the ISM Codeは船と会社が守ります。
Part B of the ISM Codeは加盟国が守ります。証書の発給と検証の手続は、会社が選ぶものでは
なく加盟国が従うものです。
定期航路の定義と海域分類を確認します
定期航路は規則第2条第10項に定義されています。同じ二地点以上を結ぶ一連の航海で、公表時刻表に従うか、体系的な運航として識別できる程度の規則性・頻度を持つものです。会社が「定期」と呼ぶだけでは判断できません。
引用文の指令98/18/ECは後継の指令2009/45/ECに置き換えられました。C・D海域の実際の境界は現行の海域指定で確認します。本稿はEU規則の適用範囲を説明するものであり、その除外基準を他地域にそのまま適用しません。
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以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、EU法令については文書ページの統合版と改正履歴も確認してください。
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