第三国証書のEU認定手続と認定撤回の段階(EU指令2022/993)
2026-08-21

加盟国籍船に一等航海士が一人乗船するとします。手にしている海技免状はEUの外の国が発給した ものです。STCW条約に従って正当に出た証書であっても、船の旗国が加盟国であれば、証書一枚では 席が開きません。
EU指令2022/993は、この扉を開ける側と閉める側を第20条から第22条までに分けて置いています。 開ける側は加盟国一つが出した申請から始まり、閉める側は不遵守の通知から始まって2か月の予告を 経ます。
第三国の証書はEU次元の決定があって初めて加盟国籍船に乗ります
Seafarers who do not possess the certificates of competency issued by Member States or the certificates of proficiency issued by Member States to masters and officers in accordance with Regulations V/1-1 and V/1-2 of the STCW Convention may be allowed to serve on ships flying the flag of a Member State provided that a decision on the recognition of their certificates of competency or certificates of proficiency has been adopted through the procedures set out in paragraphs 2 to 6 of this Article.
加盟国が発給していない証書でも加盟国籍船で勤務できます。ただし第2項から第6項までの手続を経た 認定の決定が先になければなりません。
ここで判断の単位が分かれます。認定は船員ではなく国を相手にし、その国の訓練・資格証明制度を 評価します。ですから一人の書類がどれだけ揃っていても、その国についての決定がなければ席は 開きません。
扉は加盟国一つの申請で開き、決定までは24か月かかります
A Member State which intends to recognise, by endorsement, the certificates of competency or the certificates of proficiency referred to in paragraph 1 of this Article issued by a third country to a master, officer or radio operator, for service on ships flying its flag, shall submit a request to the Commission for the recognition of that third country, accompanied by a preliminary analysis of the third country’s compliance with the requirements of the STCW Convention by collecting the information referred to in Annex II to this Directive.
申請は加盟国が出します。欧州委員会が自ら手続を始めることはありません。申請には附属書IIが
定める情報を集めて作ったpreliminary analysisを添え、その国を認定すべき理由も加盟国が書き
添えます。着手が決まれば欧州海事安全機関(EMSA)が評価を助けます。
評価で確かめるのは三つです。
- その国がSTCW条約の要件をすべて満たしているか
- 不正な証書の発給を防ぐ適切な措置が取られているか
- 海上労働条約(MLC, 2006)を批准しているか(これは考慮事項です)
要件をすべて満たすという結論が出れば、欧州委員会が認定の決定を収めた実施法令を採択します。 期限は申請を出した日から24か月で、大きな是正が必要な場合は36か月に延びます。待っている間の ために、条文は橋を一つ架けています。
The Member State submitting that request may decide to recognise the third country unilaterally until an implementing act is adopted pursuant to this paragraph.
申請した加盟国は、実施法令が出るまでその国をunilaterally認定できます。その代わり、その間に
発給した承認の件数を欧州委員会に知らせなければなりません。ですから同じ第三国の証書でも、船の
旗国によって今乗せられるかが分かれます。
承認がまだない船員を乗せられる期間は3か月です
認定の決定は国の単位で、承認は旗国が個々の証書に別に付けます。第7項は、承認がまだ出ていない 船員に扉を一つ開けます。無線の職務を除き、3か月を超えない期間だけ、第三国が発給し承認した 有効な証書で勤務させることができます。条件が一つ付きます。
Documentary proof that an application for an endorsement has been submitted to the competent authorities shall be kept readily available.
承認を申請したという書面の証拠を、すぐ取り出せる状態に置かなければなりません。その書類が船に なければ、3か月の橋は成り立ちません。
認定は少なくとも10年ごとに評価し直されます
認定は一度受ければ終わる状態ではありません。欧州委員会がEMSAの助けを得て定期的に評価し直し、 最後の評価から10年を超えることはできません。附属書IIの基準を満たし続けているか、不正な証書を 防ぐ措置が取られているかを改めて見ます。
The Commission, with the assistance of the European Maritime Safety Agency, shall carry out the reassessment of the third countries based on priority criteria.
順番を決める基準にはこうしたものが入ります。
- 第24条によるポートステートコントロール(PSC)の実績データ
- その国の証書に付けられた承認の件数と、その国が認可した海事教育・訓練機関の数
- 最後の評価の時点と、そのとき見つかった重要な工程上の欠陥の数
第21条による不遵守が確かめられれば、その国の再評価が前に繰り上がります。PSCの実績が一覧の 先頭にあることは、こう読めます。船で受けた欠陥の指摘が、国の単位の評価の入力になります。
扉が閉まる順序は通知から始まり2か月の予告を経ます
Where there are indications that a particular maritime training establishment no longer complies with the requirements of the STCW Convention, the Commission shall notify the third country concerned that recognition of that third country’s certificates will be withdrawn in two months’ time unless measures are taken to ensure compliance with all the requirements of the STCW Convention.
第21条は段階を分けて置いています。
- 加盟国または欧州委員会が不遵守を判断したら、直ちに通知し根拠を示します。
- 欧州委員会が遅滞なく第31条第1項の委員会に付託します。
- 加盟国がその国の証書の承認をすべて撤回するには、欧州委員会と他の加盟国に先に知らせます。
- 欧州委員会がEMSAの助けを得てその国を再評価します。
- 訓練機関についての兆候があれば、2か月後に撤回するとその国に通知します。
- 撤回は欧州委員会が実施法令で定め、当該加盟国が実施の措置を取ります。
2か月は猶予期間ではなく条件付きの予告です。その間に要件をすべて満たす措置を取れば、撤回は 来ません。予告を引く引き金は、海事訓練機関一つについての兆候で足ります。
撤回された後も既に付いた承認は残りますが昇級は止まります
Endorsements attesting recognition of certificates, issued in accordance with Article 4(7) before the date on which the decision to withdraw recognition of the third country is taken, shall remain valid. However, seafarers holding such endorsements may not claim an endorsement recognising a higher qualification, unless that upgrading is based solely on additional seagoing service experience.
撤回の決定日より前に出た承認は有効なまま残ります。既に乗船している船員をその日に降ろさせる 条文ではありません。その代わり、その船員はより高い資格を認める承認を求めることができません。 例外は、昇級の根拠が追加の乗船履歴だけである場合です。
ですから撤回は今日の乗船ではなく、次の昇級で掛かります。その国の証書を持つ船員を何人も乗せて いるなら、見るべきは今日の承認ではなく、それぞれの次の昇級の時期です。
その国の証書について承認が8年を超えて一つも出ていない場合も、認定を再審査します。再審査の 決定も実施法令で出され、加盟国とその国に少なくとも6か月前に通知します。
確認しておくこと
上の引用はEU指令2022/993の第20条、第21条、第22条から取りました。評価と再評価が何を見るかは 附属書IIが定め、ここではその一覧を扱っていません。
今どの国が認定の一覧にあるかは、指令の本文ではなくEU官報のCシリーズに載る一覧にあります。 一覧にある国の証書であっても、自分の船の旗国が実際に承認を付けるかは、その旗国が答えます。 証書の要件そのものはSTCW条約が定め、指令はそれをEUの中で確かめ、維持する方法を定めます。
どの船にその国の証書を持つ船員が何人乗っているかは、書類をめくって数える仕事ではありません。Bellbookは人事記録カードに資格証書と有効期限を置き、乗下船の記録と結び付けて船ごとに見せます。
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