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検査・審査

PSC抑留に対する異議申立ての効力範囲と検査官の資格要件(EU指令2009/16)

2026-08-14

抑留の通知書を受け取った船長が会社に電話をかけます。指摘の一件が事実と違うと見ています。異議を 申し立てれば船は出られるでしょうか。

EU指令2009/16の第20条は、この問いに二つの文で答えます。前の文が異議申立ての権利を与え、後の文が その異議申立てに停止の効力がないと言い切ります。権利を与える文と、その権利の力を抜く文が、一つの 項の中に並んでいます。

その配置が実務の重心を移します。この記事はその構造をたどり、最後に、判断を下す人へ指令が何を掛け ているかを見ます。

条文は異議申立ての権利を与えながら同じ項で停止の効力を外します

The owner or operator of a ship or the owner or operator’s representative in the Member State shall have a right of appeal against any detention or refusal of access by the competent authority. An appeal shall not cause the detention or refusal of access to be suspended.

right of appealを持つ人は三者です。船舶所有者、運航者、そしてその加盟国にいる彼らの代理人です。 対象は抑留とrefusal of accessの二つです。

後の文がこの権利の性質を定めます。異議を申し立てても抑留と入港拒否は停止しません。争っている間は 処分の効力が止まる制度もありますが、この条文はその道を閉じました。

ですから異議申立ては船を出すための手段ではありません。船が出る経路はこの条文の外にあります。

異議が認められても戻るのは記録です

When, as a result of an appeal or of a request made by the owner or the operator of a ship or his representative, a detention order or a refusal of access order is revoked or amended:

異議申立ての結果として、または所有者と運航者と代理人の要請によって命令が取り消されるか変更されると、 二つが続きます。一つは検査データベースを遅滞なく修正することで、もう一つには期限が付きます。

the Member State where the detention order or refusal of access order is issued shall, within 24 hours of such a decision, ensure that the information published in accordance with Article 26 is rectified.

命令を出した加盟国が、その決定から24時間以内に第26条による公表情報を訂正しなければなりません。

戻るものが何かを見ると、異議申立ての値打ちがどこにあるかが出てきます。船が港に押さえられていた時間は 戻りません。戻るのはデータベースの記載と公表された情報です。異議申立ては出港を早める手続ではなく、 記録を直す手続です。

手続は加盟国が作り、告知は船長へ行きます

Member States shall establish and maintain appropriate procedures for this purpose in accordance with their national legislation.

手続は指令ではなく加盟国の国内法が作ります。どこへ何をいつまでに出すかが国ごとに違います。指令が そろえたのは手続ではなく告知です。

The competent authority shall properly inform the master of a ship referred to in paragraph 1 of the right of appeal and the practical arrangements relating thereto.

告知を受ける人が船長です。権利を持つ人は所有者と運航者とその代理人ですが、権利があるという事実と 実際の手続を伝えられる人は船にいる船長です。抑留の通知が船上で行われるので、この配置は自然です。 その代わり実務に一段階が生まれます。船長が受けた告知が会社へ渡って初めて、期限内に手続を踏めます。

だから争う材料は検査が終わる前に作られます

停止の効力がないという一文が順序を決めます。船が出る時点は異議申立てとは無関係に決まり、異議申立ての 結果は記録にしか届きません。出港を早める仕事と、記録を守る仕事が別の作業になります。

前の仕事は検査が進む間に港で終わり、後の仕事はそのとき何が残ったかで決まります。異議申立ての手続で 後から持ち出せるのは、検査当時に作られた文書です。指摘書に書かれた文言、検査官に示した証書と記録、 そしてその場で残した回答です。

分かれ目は一つです。抑留が解けた後にまとめた説明は、そのとき新しく作った文書であり、検査が終わる前に 残したものだけがその時点の記録です。条文が停止の効力を外している以上、後に来る手続が扱う材料は前で 作られます。

条文は判断する人に資格と利害関係の禁止を掛けます

Inspections shall be carried out only by inspectors who fulfil the qualification criteria specified in Annex XI and who are authorised to carry out port State control by the competent authority.

検査ができる人が二つの条件で絞られます。附属書XIの資格基準を満たすこと、権限のある機関の授権を 受けることです。一つだけでは検査ができません。寄港国の機関に必要な専門性がなければ、その専門性を 持つ人の助力を受けられますが、助力者は検査官になるのではなく検査官を助けます。

The competent authority, the inspectors carrying out port State control and the persons assisting them shall have no commercial interest either in the port of inspection or in the ships inspected, nor shall the inspectors be employed by, or undertake work on behalf of, non-governmental organisations which issue statutory and classification certificates or which carry out the surveys necessary for the issue of those certificates to ships.

no commercial interestが二つの場所に掛かります。検査する港と検査される船であり、この禁止は機関と 検査官と助力者に一緒に掛かります。検査官にだけ掛かる条件も一つあります。法定証書と船級証書を発給し、 またはその発給に必要な検査を行う非政府機関に雇用され、あるいはそのために働かないことです。検査官は 所属機関が発給した身分証明書も携帯し、その様式は欧州委員会指令96/40/ECの共通モデルに従います。

Member States shall ensure that the competence of inspectors and their compliance with the minimum criteria referred to in Annex XI are verified, before authorising them to carry out inspections and periodically thereafter in the light of the training scheme referred to in paragraph 7.

資格は一度確認して終わりではありません。検査を任せる前に確認し、訓練計画に従ってその後も定期的に 確認します。加盟国はEUのポートステートコントロール制度の変更と条約の改正に関する訓練も提供しなければ なりません。欧州委員会は加盟国およびパリ了解覚書の署名国とともに、検査官の訓練を支える計画を作ります。

ここが前の節とつながります。停止の効力がないということは現場の判断がそのまま転がるという意味であり、 条文はその判断に資格と授権、利害関係の禁止、身分証明書、定期的な確認を重ねています。

確認しておくこと

上の引用はEU指令2009/16の第20条と第22条から取りました。異議申立ての期限と受付先、提出書類は加盟国の 国内法が定めます。検査官の資格基準は附属書XIに、第20条第4項が指す公表は第26条にあります。抑留が どういう条件で解けるかはこの二つの条文の外なので、別に確認する必要があります。その港の当局が異議 申立てをどこで受けるかが、実際の判断の出発点です。

BellbookはPSCの指摘を、その日に書かれた文言と期限のまま登録簿に残します

異議申立てが抑留を止められない以上、後で持ち出せる材料は検査当時の記録だけです。Bellbookは指摘一件ごとに文言と期限、是正の状況と根本原因を付けて船ごとに積むので、数か月後に開いてもその日に何がどう書かれたかが残っています。

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