是正できなかったPSC欠陥の航海条件と修繕ヤードへの通報(EU指令2009/16第21条)
2026-08-15

EU の港で検査を受けた船に船体構造の欠陥が一つ見つかったとします。その港では直せません。船は 出港できるのでしょうか。出港するなら、その欠陥はどうなるのでしょうか。
指令2009/16は、この場面を第19条と第21条に分けて書いています。答えは、船が出ることと欠陥が 閉じることを切り分けるところにあります。船は出て、欠陥は付いていきます。この記事は欠陥が 付いていく経路をたどります。
欠陥は直したことでも、これから直すことでも閉じます
The competent authority shall be satisfied that any deficiencies confirmed or revealed by the inspection are, or will be, rectified in accordance with the Conventions.
機関が納得しなければならないのは二つの時制です。すでに直した(are)か、これから直す
(will be)かです。後ろが開いているので、船は欠陥を抱えたままその港を出られます。
その代わり後ろには値段が付きます。いつどこで直すかを、出港の前に決めなければなりません。 第21条がその値段を決める条文です。
第21条が扱う欠陥はどんな欠陥でもよいわけではありません。第19条第2項の欠陥、つまり安全や健康や 環境に明らかに危険で抑留の理由になった欠陥です。
次の目的地は次の寄港地ではなく最も近い修繕ヤードです
Where deficiencies referred to in Article 19(2) cannot be rectified in the port of inspection, the competent authority of that Member State may allow the ship concerned to proceed without undue delay to the appropriate repair yard nearest to the port of detention, as chosen by the master and the authorities concerned, where follow-up action can be taken, provided that the conditions determined by the competent authority of the flag State and agreed by that Member State are complied with.
一つの文の中で決まるものが三つあります。
| 決めるべきこと | 決める主体 |
|---|---|
| どの修繕ヤードへ行くか | 船長と関係当局が一緒に選びます |
| どの条件で行くか | 旗国の機関が定め、検査した加盟国が同意します |
| 条件が満たすべき基準 | 条文が定めます |
目的地が貨物の日程がある次の港ではないことがまず引っかかります。抑留港から最も近い適切な 修繕ヤードであり、そこで後続の措置がとれることが必要です。
条件は旗国の権限のある機関が定め、検査した加盟国がその条件に同意しなければなりません。二つの 国が同じ条件に届かなければ、船は動けません。条件が満たすべき基準は条文が直接書いています。
Such conditions shall ensure that the ship can proceed without risk to the safety and health of passengers or crew, or risk to other ships, or without there being an unreasonable threat of harm to the marine environment.
船一隻の安全だけを見る基準ではありません。旅客と船員、他の船、海洋環境の三つを一緒に越えな ければなりません。
出港前に抑留港で測っておくものが別にあります
Where the decision to send a ship to a repair yard is due to a lack of compliance with IMO Resolution A. 744(18), either with respect to a ship’s documentation or with respect to a ship’s structural failures and deficiencies, the competent authority may require that the necessary thickness measurements be carried out in the port of detention before the ship is allowed to sail.
修繕ヤードへ送る決定がA. 744(18)の不遵守から出た場合です。書類が整っていないことでも、船体
構造の損傷と欠陥でも同じです。必要な板厚計測を抑留港で先に行うよう求めることができます。
動詞はmay requireです。求めるかどうかはその港の機関が決めます。ここで分かれるのは順序です。
修理は修繕ヤードで行うとしても、計測は抑留港で終えなければならないことがあります。
航海条件は船ではなく書面で次の当局に渡されます
In the circumstances referred to in paragraph 1, the competent authority of the Member State in the port of inspection shall notify the competent authority of the State where the repair yard is situated, the parties mentioned in Article 19(6) and any other authority as appropriate of all the conditions for the voyage.
shall notifyです。裁量ではありません。通報する内容は航海のすべての条件で、受け取る側は三つ
書かれています。
- 修繕ヤードがある国の権限のある機関
- 第19条第6項に挙げられた当事者
- 適当な場合には他の当局
第19条第6項がその当事者を書いています。抑留したとき、機関は旗国の主管庁に書面で、検査報告書を 添えて直ちに知らせます。旗国に届かなければ領事、領事がいなければ最も近い外交代表です。法定 証書や船級証書を発行した指名された検査員や承認された団体も、該当すれば一緒に受け取ります。
通報は一方向で終わりません。
The competent authority of a Member State receiving such notification shall inform the notifying authority of the action taken.
受け取った機関が何をしたかを、通報した機関に知らせます。同じ事案を二つの港が両側から持つことに なります。船の日程が変われば、それを知る当局は一つではなく二つです。
到着したかどうかを出発した港が受け取ります
In the circumstances referred to in paragraph 4, first subparagraph, point (b), the competent authority of the Member State in which the repair yard lies shall inform the authority of the Member State where the ship was found to be defective whether the ship has arrived.
到着の有無が出発した港に戻ります。欠陥が見つかった加盟国の機関が、船がその修繕ヤードに寄港 しなかったことを知ったときは、直ちに他のすべての加盟国の機関に知らせます。修繕ヤードがEUの外に あっても同じです。条件を守らずに出港した場合も経路は同じです。
その終わりが第21条第4項です。条件を守らずに出港した船と、指定された修繕ヤードに寄港しなかった 船は、EU域内のどの港にも錨地にも入れません。止まる場所がその一つの港ではなく、次に入ろうとする すべての港だというのが、この構造の要点です。ただし入港を拒否する前に、加盟国はその船の旗国の 主管庁に協議を求めることができます。
扉が閉じても欠陥を直しに入る場所は残ります
By way of derogation from paragraph 4, access by a ship as referred to in that paragraph to a specific port or anchorage may be permitted by the relevant authority of that port State in the event of force majeure or overriding safety considerations, to reduce or minimise the risk of pollution or to have deficiencies rectified in accordance with paragraph 1, provided that the owner, operator or master of the ship has implemented adequate measures to ensure the safe entry of the ship concerned to that port or anchorage to the satisfaction of the competent authority of that Member State.
例外を開ける事由が四つあります。不可抗力、安全上優先する考慮、汚染の危険を減らすか最小にする ための場合、そして第1項に従って欠陥を直すための場合です。
四つ目がこの記事の最初に戻ります。入港を拒否された船も、欠陥を直すためであれば入れます。船舶 所有者か運航者か船長が安全な入港を確保する措置をすでに実施しており、その加盟国の機関がそれで 足りると見るときです。扉を開ける側はその港の当局であり、鍵を作ってくる側は船です。
確認しておくこと
上の引用はEU指令2009/16の第19条と第21条から取りました。条文が定めるのは手続の骨格です。航海 条件の実際の中身は旗国の権限のある機関が定めるので、旗国ごとに分かれます。どこまでが最も近い 適切な修繕ヤードなのか、板厚計測を求めるか、どの項目を条件として付けるかは、その港の機関が 旗国と一緒に決めます。パリ了解覚書の指針と指令の改正版が細部を埋めるので、実際の判断はその港が 適用する版から始まります。
修繕ヤードへの寄港条件は、船がその港を出ても生きています。Bellbookは指摘登録簿に一件ごとの期限と根本原因と是正状況をまとめて受け取り、抑留の履歴を船ごとに日付順に積み上げます。
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