PSC検査の延期事由と拡大検査対象船の在港義務(EU指令2009/16)
2026-08-13

船齢が12年を超えたばら積み貨物船がEUの港に入るとします。停泊は夜間だけで、長くもありません。 この船は検査を受けるでしょうか。そして検査が始まったら、予定した時刻に出港できるでしょうか。
指令2009/16はこの二つの問いに逆の方向で答えます。前の条文は、当局が検査を後ろへ延ばせる扉を 開けておきます。後ろの条文は、拡大検査の対象になった船に、検査が終わるまで港に残れと言います。 延ばす扉と押さえる扉が一つの指令の中に並んでいます。この記事はその二つを順に開けます。
延期は次の検査の場が15日以内に決まるときだけ開きます
A Member State may decide to postpone the inspection of a Priority I or Priority II ship in any of the following circumstances:
第8条第1項です。延ばす主体は加盟国で、対象はPriority IかPriority IIの船です。経路は三つに
限られます。
| 延期の経路 | 条文が付けた条件 |
|---|---|
| (a) 同じ加盟国の次の入港で検査 | 実際の出港時刻から15日以内。その間に旗国の港を除いて他の港に寄らないこと |
| (b) 他国の寄港地で検査 | 15日以内。その港がある国が、その検査を行うと事前に同意していること |
| (c) 同じ寄港地で検査 | 15日以内。定期航路のro-ro旅客船と高速旅客船もここに入る |
三つの経路に共通して付くのが15日です。延期は検査を消すのではなく、次の検査の場をあらかじめ 決めておくことです。(b)はその場を他国が引き受けるので事前同意が条件になり、(a)は逆に、その間に 他の港へ寄るなという条件が付きます。
延ばした検査とできなかった検査は実績表で別に扱われます
加盟国には年間の検査義務があります。
inspect all Priority I ships, referred to in Article 12(a), calling at its ports and anchorages; and
自国の港と錨地に入るPriority Iの船はすべて検査しなければなりません。Priority Iと
Priority IIを合わせた年間の件数も、その国の分担以上でなければなりません。ですから検査を
延ばすことは、そのまま見送ることではなく実績表に触れることになります。条文がその扱いを別に
書いています。
Where a Member State decides to postpone an inspection pursuant to the first subparagraph, that postponed inspection shall not count towards that Member State’s compliance with its annual inspection commitment referred to in Articles 6 and 7 if the postponed inspection is recorded as such in the inspection database.
延ばした検査は、その国の年間義務の履行として数えません。条件は一つ、データベースに延期として 記録することです。
Where an inspection is not carried out on a Priority I or Priority II ship for operational reasons, it shall not be counted as a missed inspection, provided that the reason for not carrying out the inspection is recorded in the inspection database and any of the following exceptional circumstances apply:
こちらは延ばしたのではなく、できなかったものです。それでもmissed inspectionとしては数え
ません。代わりに事由が三つに限られます。検査が検査官や船舶、乗組員、港湾、海洋環境の安全に
危険を生むと権限のある機関が見る場合、入港が夜間だけに行われる場合、停泊時間が短すぎて検査を
十分に行えない場合です。第8条第4項は、異例で予見できない事情をもう一つ付けます。
二つの筋が同じことを求めます。理由を検査データベースに残すことです。記録しなければ、延期も 例外も立ちません。
夜間だけ入る船が夜間の事由で通り続けることはありません
Where the circumstances under point (b) apply, Member States shall take the measures necessary to ensure that ships which regularly call during night time are inspected as appropriate.
夜間の入港はその日の事由であって、繰り返し使える免除ではありません。同じ船が夜間だけ入り 続けるなら、加盟国はその船を適切に検査する方法を用意しなければなりません。条文は事由を開け ながら、その事由が固まることを同時に塞ぎました。
錨地にいる船は第8条第3項が別に扱いますが、条件の形は同じです。15日以内に他の港か錨地で検査を 受けるか、夜間と短い停泊と安全上の危険を理由として挙げ、その理由をデータベースに残す場合です。
拡大検査の対象はプロファイルの軸と船齢の軸の二つで決まります
The following categories of ships are eligible for an expanded inspection in accordance with Annex I, Part II, 3A and 3B:
第14条第1項が四つの範疇を付けます。
- リスクプロファイルが高い船
- 船齢12年を超えた旅客船、ばら積み貨物船、油タンカー、ガス運搬船、NLSタンカー、ケミカルタンカー
- 上の二つの範疇に当たる船に、優先要因または予期しない要因がある場合
- 第16条と第21条第4項により出された入港拒否命令の後に検査を受ける船
最初の範疇はプロファイルの軸で、二つ目は船種と船齢の軸です。二つが別に立っているのが読むべき 場です。プロファイルが高くなくても、その船種であって船齢が12年を超えれば対象になり、 プロファイルが高ければ船種と船齢は見ません。四つ目の範疇だけ性質が違います。前の三つが今の 状態を見る条件なら、これは履歴を見る条件です。
短い停泊は拡大検査で船を放しません
The operator or master of the ship shall ensure that sufficient time is available in the operating schedule to allow the expanded inspection to be carried out.
日程に検査の時間を確保する義務は運航者と船長にあります。先ほど短い停泊は、当局が検査を見送れる 事由でした。同じ事実がここでは、船が使える事由ではありません。
Without prejudice to control measures required for security purposes, the ship shall remain in the port until the inspection is completed.
船は検査が終わるまで港に残ります。出港時刻を決めるのは荷役の日程ではなく検査の終了です。
An expanded inspection shall be carried out, as far as possible, by no fewer than two port State control inspectors. If this is not possible, the reasons shall be duly recorded in the inspection database. The scope of an expanded inspection, including the risk areas to be covered, is set out in Annex VII.
付く人員はできる限り検査官二名で、そうできない場合はその理由をデータベースに残します。何を 見るかは附属書VIIが定めます。人員と範囲を条文が直接書いたということは、拡大検査に時間がかかる という意味であり、その時間を日程に入れる分担が前の引用の義務へ戻ってきます。
確認しておくこと
上の引用はEU指令2009/16の第5条と第8条、第14条から取りました。これらの条文は改正を経ており、 項ごとに改正の時点が違います。拡大検査の対象判定は附属書I第II部の3Aと3Bが、検査の範囲は 附属書VIIが埋め、その適用のための実施法令は欧州委員会が採択します。延期と例外をどう記録するか は、加盟国の実施法令とパリ了解覚書の運用で分かれます。
拡大検査の対象かどうかは船種と船齢で分かれ、停泊の日程に検査の時間を入れるかは入港前に決めておく必要があります。Bellbookは船ごとの検査・指摘の履歴と近づく検査の日程を一つの場所に置くので、次の入港前に何が開いたままかが見えます。
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