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検査・審査

旗国検査官の権限の範囲と申立人の保護(MLC規則5.1.4)

2026-07-15

旗国検査官が船に上がったとき、その人にできることの範囲はどこまでなのか。出港を止められるのか、 誰が申し立てたのかを教えるのか、検査報告書は誰に行くのか。MLC, 2006の基準A5.1.4が検査官の権限 と、その権限に付いた制限を併せて書いています。この記事は権限の側と制限の側を並べて読みます。

検査の間隔はいかなる場合も三年を超えられません

  1. Inspections shall take place at the intervals required by Standard A5.1.3, where applicable. The interval shall in no case exceed three years.

前の文は海上労働証書の規則の間隔に従えというもので、後ろの文が底を敷きます。 in no case exceed three yearsです。海上労働証書を備える義務のない船にもこの上限は残ります。 証書の規則が適用されず中間検査の時期がなくても、検査そのものは三年以内に戻ってこなければ なりません。

検査官に与えられた権限は三つで、最後が出港の禁止です

乗船する権限、必要と判断する検査・試験・調査を行う権限、そして欠陥の是正を要求する権限です。 三つ目に条件付きでもう一つ付いています。

(c) to require that any deficiency is remedied and, where they have grounds to believe that deficiencies constitute a serious breach of the requirements of this Convention (including seafarers’ rights), or represent a significant danger to seafarers’ safety, health or security, to prohibit a ship from leaving port until necessary actions are taken.

出港禁止の敷居は二筋に分かれます。条約の要件の重大な違反であると信じる根拠があるとき、または 船員の安全・健康・保安に重大な危険となると信じる根拠があるときです。重大な違反の側の括弧に including seafarers’ rightsが入っているため、安全設備だけでなく船員の権利の侵害もこの敷居の 候補になります。

この措置には不服の道が付きます。第8項が司法または行政機関への不服申立ての対象になると定めます。 そして第9項は反対方向の裁量を与えます。当該船員の安全・健康・保安を危うくする明白な違反がなく、 同種の違反の前歴もなければ、検査官は手続を開始し、または勧告する代わりに助言で代えられます。

誰が申し立てたかは会社の側へ渡りません

  1. Inspectors shall treat as confidential the source of any grievance or complaint alleging a danger or deficiency in relation to seafarers’ working and living conditions or a violation of laws and regulations and give no intimation to the shipowner, the shipowner’s representative or the operator of the ship that an inspection was made as a consequence of such a grievance or complaint.

二重になっています。前半は申立ての出所を秘密として扱えというもの、後半はその申立てのために 検査が行われたという事実そのものを、船舶所有者とその代理人と運航者に匂わせるなというものです。

二つ目のほうが広い。名前を言わなくても「申立てがあって来た」と伝われば、船の中で候補が絞られ ます。条文はその経路も併せて閉じました。

前の第5項がこの条文の対です。明らかに根拠がないとは見ない申立てを受けたら、旗国は調査に着手し、 見つかった欠陥が是正されるよう措置しなければなりません。受付と調査は開け、出所は閉じるという 構造です。

検査報告書は船長に一部、掲示板に一部です

  1. Inspectors shall submit a report of each inspection to the competent authority. One copy of the report in English or in the working language of the ship shall be furnished to the master of the ship and another copy shall be posted on the ship’s notice board for the information of the seafarers and, upon request, sent to their representatives.

配付先は三つです。権限のある機関、船長、そして船内の掲示板です。掲示する写しの目的が for the information of the seafarersと書かれています。その検査で何が指摘されたのかを船員が 知れるようにすることが、この条文の目的です。

言語の条件も付いています。英語またはその船の使用言語です。使用言語が何であるか定まっていな ければ、この要件を満たしたかを判断する基準がありません。

権限が誤って使われたときの立証責任は申立人にあります

  1. Compensation shall be payable in accordance with national laws and regulations for any loss or damage suffered as a result of the wrongful exercise of the inspectors’ powers. The burden of proof in each case shall be on the complainant.

前の文だけ見ると、権限の誤った行使に対する補償が開いているように読めます。後ろの文がその扉を 狭めます。立証責任は申立人にあります。不合理な抑留や遅延を争うなら、会社の側が資料を持って いなければならないという意味です。

第15項が同じ方向で検査官の側に義務を掛けます。検査を行い、または措置を取るときは、船が不合理 に抑留され、または遅延させられないよう、すべての合理的な努力を払わなければなりません。

確認しておくこと

上の引用はMLC, 2006統合版(2022年改正を含む)の印刷87ページから90ページで取りました。 基準A5.1.4は強制規定ですが、検査官の資格と任命、不服の道の形、補償請求の要件は旗国の法令が 定めます。その船の旗国が検査の周期を何年で運用しているか、使用言語が何に指定されているか、 そして前回の検査報告書が船内のどこに掲示されているかが、実際の判断の出発点です。

Bellbookは旗国検査の指摘を船ごとの台帳に期限とともに残します

検査で出た指摘は、是正期限と根本原因が一緒に付いていて初めて次の検査で使えます。Bellbookは指摘一件ごとに期限と担当を受け取って船別にまとめ、残りの期限を一覧に表示します。

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