MLC附録A5-Iの証書発給前に検査・承認する項目と、検査官の書類要求の範囲
2026-08-17

新しく管理を引き受けた船が最初の海上労働証書の検査を控えているとします。検査官が何を見るのかを 前もって知ることができるのか。MLC, 2006はこの問いに一覧で答えます。附録A5-Iが、証書を出す前に 検査して承認しなければならない項目を十六行で書き留めています。
一覧があるということは、検査の範囲が閉じているということです。ところが十六行は会社の中で一か所に 集まっていません。人事と賃金と配乗と船内設備と契約が、それぞれ一片ずつ持っています。
この記事は、その一覧を会社が散らして管理している記録に対応させ、検査官がその記録をどこまで 要求できるのかを見ます。
附録は検査だけでなく承認まで求めます
The working and living conditions of seafarers that must be inspected and approved by the flag State before certifying a ship in accordance with Standard A5.1.3, paragraph 1:
動詞が二つです。inspectedとapprovedです。検査官が見て通り過ぎるだけでは終わりません。旗国が
承認して初めて証書が出ます。そしてその時点をbefore certifying a shipと釘付けにしています。証書
発給の手前に置かれた関門です。
一覧は次のとおりです。
- 最低年齢
- 健康証明書
- 船員の資格
- 船員の雇用契約
- 許可・認証・規制を受けた民間の船員紹介事業の利用
- 労働時間または休息時間
- その船の定員
- 居住設備
- 船内娯楽設備
- 食料および司厨
- 安全衛生および災害防止
- 船内医療
- 船舶内における苦情に関する手続
- 賃金の支払
- 送還に関する財政的保証
- 船舶所有者の責任に関する財政的保証
各行は、条約が別の場所ですでに定めている主題の名前です。附録が新しい義務を作るわけではありません。 すでにある義務の中から、証書を出す前に必ず確かめるものを選んで一か所に集めただけです。
検査官は条約の要件とその船のDMLCに書かれた措置を並べて見ます
- Each Member shall maintain a system of inspection of the conditions for seafarers on ships that fly its flag which shall include verification that the measures relating to working and living conditions as set out in the declaration of maritime labour compliance, where applicable, are being followed, and that the requirements of this Convention are met.
基準A5.1.4の第1項が検査に二重を掛けます。一つは条約の要件を満たしているかです。もう一つはDMLCに 書かれた措置が実際に守られているかです。
二つ目の層は船ごとに違います。照合の基準が条約本文ではなく、その船の書類に書かれた文だからです。 DMLCに休息時間を船員本人の署名で毎日記録すると書いてあれば、検査官はその文を持って署名を探します。 条約本文に署名の話がなくてもそうです。
ここで分かれる地点が一つ出ます。DMLCに書いた措置が実際の運用より先に進んでいると、条約を守っていても その文のせいで欠陥が残ります。附録A5-Iが何を見るかを定め、DMLCがその船でそれをどう守るかを書きます。
十六行は人に付くものと船に付くものに分かれます
一覧を一度に用意できない理由がここにあります。行ごとに付く場所が違います。
| 附録A5-Iの行 | 付く場所 |
|---|---|
| 最低年齢、健康証明書、船員の資格、雇用契約、労働時間または休息時間、賃金の支払 | 船員一人ごと |
| 定員、居住設備、船内娯楽設備、食料および司厨、船内医療、安全衛生、苦情に関する手続 | 船一隻ごと |
| 民間の船員紹介事業の利用、送還の財政的保証、船舶所有者の責任の財政的保証 | 会社が結んだ契約 |
船員ごとに付く六行は、乗組員が変わるたびに作り直されます。船員が一人新しく乗り組めば、生年月日と 健康証明書と資格証書と雇用契約と休息時間の記録が一緒に付いてこなければなりません。一人抜ければ、 その人の分の五つが一緒に抜けます。
船ごとに付く七行は、一度整えれば次の検査まで保たれる性質です。設備と備品と手順書がここに入ります。
契約に付く三行は船になく、事務所にあります。検査官が船で見られるのは写しだけです。写しを積んで いなければ、船の上ではこの三行の確認が終わりません。
検査官は帳簿と証書の提出を要求できます
(c) to require the production of any books, log books, registers, certificates or other documents or information directly related to matters subject to inspection, in order to verify compliance with the national laws and regulations implementing this Convention;
この文は指針B5.1.4にあります。強制規定ではなく、旗国が参考にする指針です。ただし基準A5.1.4の 第7項が、必要と判断する検査と試験と調査を行う権限をすでに検査官に与えています。指針は、その権限が 実際に何を呼ぶのかを解いて置いた場所です。
同じ指針の別の項目が要求の範囲をさらに広げます。事前の通告なしに自由に乗船すること、船長と船員と 船舶所有者とその代理人に質問すること、そして飲料水と食料と資材の試料を分析のために採取することです。 最後の項目が附録の食料および司厨の行にそのまま届きます。
試料を採取するときは船舶所有者かその代理人に通知するかその場に立ち会わせ、検査官が数量を記録します。 要求の範囲が広い分、その要求に手続が付いています。
欠陥が出たら、まず来るのは通知です
(f) following an inspection, to bring immediately to the attention of the shipowner, the operator of the ship or the master, deficiencies which may affect the health and safety of those on board ship;
immediatelyが付いています。報告書が出るまで待ちません。受け取る側も三つと書かれています。
船舶所有者、船舶の運航者、船長です。
基準A5.1.4の第7項がここから一段先に行きます。検査官は欠陥の是正を要求できます。そしてその欠陥が 条約要件の重大な違反であるか、船員の安全と健康と保安に重大な危険となると信じる根拠があれば、必要な 措置が終わるまで出港を止めることができます。
その次の段は旗国の分担です。
- Adequate penalties and other corrective measures for breaches of the requirements of this Convention (including seafarers’ rights) and for obstructing inspectors in the performance of their duties shall be provided for and effectively enforced by each Member.
制裁の対象が二つ書かれています。条約要件の違反と、検査官の職務の妨害です。二つ目が別に書かれて いるということは、先に見た書類の要求に応じないこと自体が別個の制裁の対象になるという意味です。 一覧と権限と制裁が一本につながります。
確認しておくこと
上の引用はMLC, 2006統合版(2022年改正を含む)の印刷88ページから91ページまでと102ページから 取りました。附録A5-Iと基準A5.1.4は強制規定で、指針B5.1.4はそうではありません。十六行のそれぞれに 何を備えるべきかは旗国の法令が埋めます。
その船の旗国がDMLCにどの条項を書き入れているか、検査を承認された団体に委ねているか、検査官が事前の 通告なしに来るかが、実際の準備の出発点です。
十六行は会社の中で人事と賃金と休息時間と証書に散らばっています。Bellbookは船員の人事記録カードと休息時間の記録と証書の満了日を船別に同じ場所に置くので、検査官が一行ずつ尋ねるときに書類を探し回らずに済みます。
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