船舶料理人の資格要件の三段階と特例の期間(MLC規則3.2)
2026-07-18

船に完全な資格を持つ料理人が必ず要るのか、という問いの答えは一つではありません。MLC, 2006の 基準A3.2が要件を三段階に置いたからです。原則があり、定員の少ない船への緩和があり、それでも 足りないときの特例があります。段階ごとに条件と期間が違います。
食事は乗船期間を通じて無償です
food and drinking water supplies, having regard to the number of seafarers on board, their religious requirements and cultural practices as they pertain to food, and the duration and nature of the voyage, shall be suitable in respect of quantity, nutritional value, quality and variety, and shall be provided free of charge during the period of engagement;
free of charge during the period of engagementが条文にあります。賃金から食費を差し引く構造は
この一文と衝突します。
適合性の基準も四つで書かれています。量、栄養価、品質、多様性です。そしてその基準を判断する際に 考慮するのが、乗船人員、食に関する宗教上の要求と文化的慣行、航海の期間と性格です。同じ献立でも 航海が長くなれば多様性の基準で分かれ得るという意味です。
一段目は訓練を受け資格を備えた料理人です
船舶所有者は、料理人として雇用された船員が当該加盟国の法令の定める要件に従って訓練を受け、 資格を備え、その職に適任と認められるようにしなければなりません。その要件に何が入るかも条文が 書いています。
- The requirements under paragraph 3 of this Standard shall include a completion of a training course approved or recognized by the competent authority, which covers practical cookery, food and personal hygiene, food storage, stock control, and environmental protection and catering health and safety.
課程の内容が五筋で列挙されています。実務調理、食品および個人の衛生、食品の保管、在庫管理、 そして環境保護と司厨部門の保健安全です。調理の技能だけではこの一覧を埋められません。そして その課程は権限のある機関が承認または認定したものでなければなりません。
二段目は定員十名未満の船への緩和です
- On ships operating with a prescribed manning of less than ten which, by virtue of the size of the crew or the trading pattern, may not be required by the competent authority to carry a fully qualified cook, anyone processing food in the galley shall be trained or instructed in areas including food and personal hygiene as well as handling and storage of food on board ship.
ここでも緩和は自動ではありません。定員が十名未満であることが条件のすべてではなく、乗組員の規模 や運航の形態を理由に、権限のある機関が完全な資格を持つ料理人を求めないことがある、という構造 です。
そして緩むのは完全な資格の要件であって、訓練そのものではありません。調理室で食品を扱う者は誰 であれ、食品および個人の衛生と、船内での食品の取扱い・保管を含む分野で訓練または指示を受けな ければなりません。
三段目は期間の定まった特例です
- In circumstances of exceptional necessity, the competent authority may issue a dispensation permitting a non-fully qualified cook to serve in a specified ship for a specified limited period, until the next convenient port of call or for a period not exceeding one month, provided that the person to whom the dispensation is issued is trained or instructed in areas including food and personal hygiene as well as handling and storage of food on board ship.
特例に付いた制限は四つです。例外的な必要のある状況であること、特定の船に対するものであること、 期間が特定されること、そしてその期間が次の都合のよい寄港地までであるか一か月を超えないこと です。ここにも衛生と取扱い・保管の訓練の条件が付きます。
期間の上限が条文に打ち込まれている点が実務では重要です。特例で乗せた人がそのまま席に残り続ける 構造は条文の中にありません。
年齢の敷居は段階と関係なく生きています
- No seafarer under the age of 18 shall be employed or engaged or work as a ship’s cook.
三段階のどこにも、この条文をかわす道はありません。緩和された船でも、特例を受けた場合でも、 18歳未満は料理人として働けません。
船内の点検は文書で残さなければなりません
基準A3.2の第7項が、船長または船長の権限の下での頻繁な文書化された点検を求めます。対象が三つ 列挙されています。食品と飲料水の量・栄養価・品質・多様性、食品と飲料水の保管・取扱いに使う すべての場所と設備、そして調理室と食事の準備・提供に使うその他の設備です。
documentedが条文に入っているので、点検をしたという事実だけではこの項を満たしません。
確認しておくこと
上の引用はMLC, 2006統合版(2022年改正を含む)の印刷55ページから57ページで取りました。料理人の 資格の具体的要件と課程の承認は旗国の法令が定めます。その船の定員が何名か、旗国が完全な資格を 持つ料理人を求めるか、特例を受けたならその期間がいつ終わるか、そして船内の点検記録が文書として 残っているかが、実際の判断の出発点です。
料理人の資格は職位に付く要件なので、その席に誰がいるかと併せて見る必要があります。Bellbookは職位ごとに必要な証書を掛け、船員別に有無を格子で見せるので、空欄がどこかが乗船前に表に出ます。
無料で始める関連記事
- タンカー貨物取扱い訓練の基礎と上級の分かれ方(STCW規則V/1-1・V/1-2)船員・労務 · 2026-08-12
- STCW保安資格の三つの層と適用対象(規則VI/5・VI/6)船員・労務 · 2026-08-11
- 生存艇と上級消火の資格に必要な5年ごとの維持証拠と船上経験が認められる範囲(STCW コード A-VI/2・A-VI/3)船員・労務 · 2026-08-10