タンカー貨物取扱い訓練の基礎と上級の分かれ方(STCW規則V/1-1・V/1-2)
2026-08-12

ケミカルタンカーに3年乗った二等航海士が、LPG船の一等航海士に移るとします。貨物の作業を知って いる人ですが、新しい船では貨物に直接の責任を負う席に座ります。いま持っている証書でその席に 立てるかが問題です。
STCWの規則V/1-1と規則V/1-2がこの問いに答えます。二つの条文が作る証書は五つで、その五つを 分ける軸は二つです。基礎と上級が一つ、油系とガス系が一つです。
軸を越える方法も条文の中にあります。承認された乗船履歴が、ある場所では課程の代わりになり、 別の場所では課程の上に載ります。この違いが右の問いの答えを決めます。
基礎の証書を呼ぶのは職名ではなく割り当てられた貨物業務です
1 Officers and ratings assigned specific duties and responsibilities related to cargo or cargo equipment on oil or chemical tankers shall hold a certificate in basic training for oil and chemical tanker cargo operations.
Officers and ratingsが並んでいます。職員と部員を分けていません。扉を開けるのは割当てです。
貨物または貨物設備に関係する具体的な業務と責任を受けたかどうかが基準です。
だから同じ職名でも船によって分かれます。貨物業務を受けていない人にこの条文は証書を求めず、 部員でも貨物設備を扱う業務を受ければ基礎の証書が要ります。
証書の名前も見ておく価値があります。
basic training for oil and chemical tanker cargo operations、油タンカーとケミカルタンカーが
一つの名前の中に入っています。基礎の段階でこの二つは分かれません。
基礎では乗船履歴が課程の代わりになります
2 Every candidate for a certificate in basic training for oil and chemical tanker cargo operations shall have completed basic training in accordance with provisions of section A-VI/1 of the STCW Code and shall have completed: .1 at least three months of approved seagoing service on oil or chemical tankers and meet the standard of competence specified in section A-V/1-1, paragraph 1 of the STCW Code; or .2 an approved basic training for oil and chemical tanker cargo operations and meet the standard of competence specified in section A-V/1-1, paragraph 1 of the STCW Code.
前に条件が一つ掛かっています。A-VI/1による基本安全訓練を終えていることです。これを終えな ければ、後ろの二つの道は開きません。
二つの道は互いの代わりになります。一つは承認された乗船履歴3か月以上、もう一つは承認された 基礎課程の修了です。どちらでもA-V/1-1第1項の能力基準を満たすという要求はそのまま付いて います。履歴が代えるのは課程であって、能力基準ではありません。
履歴の側の文で船種がoil or chemical tankersです。ケミカルタンカーで積んだ3か月が、油
タンカーの側の基礎の証書にもそのまま入ります。基礎で二つの船種が一つの証書であることと同じ
理由です。
上級を求められるのは四つの職名と貨物に直接の責任を負う人です
3 Masters, chief engineer officers, chief mates, second engineer officers and any person with immediate responsibility for loading, discharging, care in transit, handling of cargo, tank cleaning or other cargo-related operations on oil tankers shall hold a certificate in advanced training for oil tanker cargo operations.
前半は四つの職名です。船長、機関長、一等航海士、一等機関士です。この四つは貨物業務を割り 当てられたかどうかと関係なく、名前で掛かります。
後半は職名ではなく責任です。any person with immediate responsibilityが、積荷、揚荷、輸送中
の管理、貨物の取扱い、タンク洗浄、その他の貨物関連作業に付きます。この文があるので、職名の
表だけを見て上級の対象者を選ぶことはできません。その船で誰が貨物作業に直接の責任を負うかを
先に決める必要があります。
ケミカルタンカーは第5項が、液化ガスタンカーは規則V/1-2第3項が同じ文を書きます。四つの職名と 責任の文がそのまま繰り返され、変わるのは船種と証書の名前だけです。
上級では履歴が課程の代わりにならず、課程の上に載ります
4 Every candidate for a certificate in advanced training for oil tanker cargo operations shall: .1 meet the requirements for certification in basic training for oil and chemical tanker cargo operations; and .2 while qualified for certification in basic training for oil and chemical tanker cargo operations, have: .2.1 at least three months of approved seagoing service on oil tankers, or .2.2 at least one month of approved onboard training on oil tankers, in a supernumerary capacity, which includes at least three loading and three unloading operations and is documented in an approved training record book taking into account guidance in section B-V/1; and .3 have completed approved advanced training for oil tanker cargo operations and meet the standard of competence specified in section A-V/1-1, paragraph 2 of the STCW Code.
三つの部分がすべて必要です。一つ目は基礎の証書の要件を満たすことです。二つ目は乗船履歴か 船上訓練です。三つ目は承認された上級課程を修了し、A-V/1-1第2項の能力基準を満たすことです。
基礎で履歴が課程の代わりになっていた構造は、ここでは消えます。上級課程の修了は三つ目に別に あり、履歴は二つ目に別に求められます。履歴を満たしたから課程を飛ばせるわけではありません。
二つ目にはもう一つ条件が前に付いています。
while qualified for certification in basic training、つまり基礎の資格を備えた状態で積んだ
履歴でなければなりません。基礎の証書を受ける前に同じ船で乗った期間は、ここに入りません。
順序が要件の一部です。
| 二つ目の二つの形 | 期間 | 条文が併せて求めるもの |
|---|---|---|
| その船種での承認された乗船履歴 | 3か月以上 | なし |
| その船種での承認された船上訓練 | 1か月以上 | in a supernumerary capacity、積荷3回と揚荷3回以上、承認された訓練記録簿に記録 |
下の道は期間が短い代わりに条件が細かいです。期間だけ満たしておいて記録を後から作れる構造では ありません。
履歴の船種も狭くなります。基礎では油タンカーとケミカルタンカーの両方でしたが、上級の油
タンカーはon oil tankersです。ケミカルタンカーの履歴で上級の油タンカーの要件は満たせ
ません。
油系とガス系は互いの証書を受け付けません
1 Officers and ratings assigned specific duties and responsibilities related to cargo or cargo equipment on liquefied gas tankers shall hold a certificate in basic training for liquefied gas tanker cargo operations.
規則V/1-2第1項は規則V/1-1第1項と同じ構造を使います。しかし証書の名前が違います。液化ガス タンカーには別の基礎の証書があり、油タンカーとケミカルタンカーを一つの名前にまとめた基礎の 証書はここまで来ません。能力基準も別の節を指します。
| 証書 | 能力基準 | 履歴・訓練の要件 |
|---|---|---|
| 基礎(油・ケミカルタンカー) | A-V/1-1第1項 | その船種で3か月、または承認された基礎課程 |
| 上級(油タンカー) | A-V/1-1第2項 | 基礎の資格、油タンカー3か月または船上訓練1か月、上級課程 |
| 上級(ケミカルタンカー) | A-V/1-1第3項 | 基礎の資格、ケミカルタンカー3か月または船上訓練1か月、上級課程 |
| 基礎(液化ガスタンカー) | A-V/1-2第1項 | 液化ガスタンカーで3か月、または承認された基礎課程 |
| 上級(液化ガスタンカー) | A-V/1-2第2項 | 基礎の資格、液化ガスタンカー3か月または船上訓練1か月、上級課程 |
冒頭の二等航海士にこの表がそのまま掛かります。ケミカルタンカーで積んだ3年は、液化ガス タンカーの基礎の証書の履歴要件に入りません。そして一等航海士の席は規則V/1-2第3項が名前で 呼ぶ席なので、上級まで必要です。
発給の形は二つです。
7 Administrations shall ensure that a certificate of proficiency is issued to seafarers, who are qualified in accordance with paragraphs 2, 4 or 6 as appropriate, or that an existing certificate of competency or certificate of proficiency is duly endorsed.
別のcertificate of proficiencyとして出るか、すでに持っている海技免状や資格証書に承認として
付きます。規則V/1-2第5項が液化ガスタンカーについて同じ文を書きます。どちらの形で出ても、
要件が変わったわけではありません。
確認しておくこと
上の引用はSTCW/CONF.2/33の規則V/1-1と規則V/1-2から取りました。条文が定めるのは証書の種類、 その証書を呼ぶ席、そして最短の期間までです。
何を承認された乗船履歴と見るか、課程を誰が承認するか、訓練記録簿の様式が何かは主管庁が 定めます。別の証書として出すか、すでに持っている証書に承認を付けるかも同じです。B-V/1は指針 であって強制規定ではありません。
能力基準そのものは上の引用に入っていません。A-V/1-1とA-V/1-2の各項がどの項目をどの水準で 求めるかは、その節の表で確認する必要があります。
上級の証書の履歴要件は、どの船種にいつから乗ったかで分かれます。Bellbookは人事記録カードに証書を種類別に置き、乗下船の記録で船ごとの乗船期間を残します。
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