FuelEUの温室効果ガス強度上限と、赤字を埋める三つの道(EU規則2023/1805)

FuelEUは、船内で使用するエネルギーの年間平均温室効果ガス強度を規制します。上限を超えると遵守不足となります。繰越し、前借り、プーリングにはそれぞれ異なる条件があります。
本稿はEUの地域制度を扱います。FuelEUは原則としてEU港へ寄港する商業旅客・貨物船のうち5,000 GT超の船に旗国を問わず適用され、例外があります。世界の全船舶に共通する義務ではありません。
上限は基準値を年ごとの割合で削って作ります
- The limit referred to in paragraph 1 shall be calculated by reducing the reference value of 91,16 grams of CO2 equivalent per MJ by the following percentage:
| 適用の時点 | 基準値から削る割合 |
|---|---|
| 2025年1月1日から | 2% |
| 2030年1月1日から | 6% |
| 2035年1月1日から | 14,5% |
| 2040年1月1日から | 31% |
| 2045年1月1日から | 62% |
| 2050年1月1日から | 80% |
基準値はMJあたり二酸化炭素換算91,16グラムです。規律の対象が年間の平均である点も併せて見る必要が あります。一つの航海が悪かったからといってすぐ赤字になるのではなく、一年を平均した値で判断します。
強度そのものは附属書Iの方法論に従い、エネルギー単位あたりの温室効果ガス排出量として計算します。
一つ目の道は繰越で、締切は書類の発給です
黒字が出れば、同じ船の次の報告期間の残高へ繰り越せます。繰越はFuelEUデータベースに記録し、検証者 の承認を受けます。ところが、その扉がいつ閉じるかが条文に書かれています。
The company may no longer bank the compliance surplus once the FuelEU document of compliance has been issued.
適合書類が発給された後は繰り越せません。書類の発給前に繰越を決めなければならないという意味です。
二つ目の道は前借りで、利息が付きます
赤字が出れば、次の報告期間からその分の黒字を前もって引いてこられます。ただし返す量が借りた量より 多くなります。
The advance compliance surplus shall be added to the ship’s compliance balance in the reporting period and the advance compliance surplus multiplied by 1,1 shall be subtracted from the same ship’s compliance balance in the following reporting period.
引いてきた分を今期の残高に足し、次期ではその値に1,1を掛けた量を引きます。先送りの代価が条文に数字 で打ち込まれています。
制限も二つ付きます。一つは大きさです。第4条第2項の上限にその船のエネルギー消費を掛けた値の2%を 超える量は借りられません。もう一つは回数です。連続する二つの報告期間については借りられません。 赤字を先送りし続ける経路が塞がれています。
三つ目の道はプーリングで、有効の条件が三つです
二隻以上の船の遵守残高を合わせて要件を満たすことができます。ただし一隻の残高は同じ報告期間に二つ 以上のプールへ入れられません。温室効果ガス強度の目標用のプールと再生燃料の副目標用のプールは別に 置けます。
- A pool is valid only if the total pooled compliance is positive, if ships which had a compliance deficit as calculated in accordance with Article 16(4) do not have a higher compliance deficit after the allocation of the pooled compliance, and if ships which had a compliance surplus as calculated in accordance with Article 16(4) do not have a compliance deficit after the allocation of the pooled compliance.
三つの条件をほどくとこうなります。合算した遵守が正であること、赤字だった船が配分の後に赤字をより 大きくしないこと、そして黒字だった船が配分の後に赤字にならないことです。後の二つは、プールが特定 の船に負担を押し付けるのに使われないよう塞ぎます。
手続もデータベースを通ります。会社は、プールに入れる意思と、総残高の船別の配分と、その配分を検証 する検証者の選択をFuelEUデータベースに登録します。プールに入る船が二つ以上の会社に属する場合は、 関係する会社すべてがその内容をデータベースで確認しなければなりません。
プールに入れない船もあります。第24条の義務を守っていない船です。
プール構成と船別残高配分は検証年の4月30日までに検証者が確定し、FuelEUデータベースに記録します。2025年報告期間なら2026-04-30が期限です。欧州委員会FAQの手続を確認します。
組合せの制限: 第21条第7項により、プール参加船は同じ報告期間に第20条第2項の借入を利用できません。一方、配分後に個船の余剰が残れば、第21条第6項と第20条第1項による繰越が可能です。同一期間の計算でプーリングと借入を併用しないでください。
三つの道の後に、検証者が残高を記録します
検証期間の5月1日より前に、検証者は第20条と第21条を適用した後の検証済み遵守残高をFuelEUデータベース に記録します。繰越と前借りとプーリングがその前に片付いていなければならないという意味です。
確認しておくこと
上の引用は規則2023/1805から取りました。強度の計算の方法論と排出係数は附属書が定め、欧州委員会が 委任法令で新しいエネルギー源の係数を加えたり既存の係数を直したりできます。その船の今期の残高が黒字 か赤字か、前の期間に前借りをしたか、そしてプールを組む別の船が同じ会社の中にあるかが、実際の判断の 出発点です。
プール全体の余剰と各船への配分条件を一緒に検算します
以下は同じ単位で縮約した架空の適合残高です。実船データや取引可能な排出枠の数量ではありません。第21条の配分条件だけを比較しており、登録・検証などの要件は別途満たす必要があります。
| 配分案 | 船舶A | 船舶B | 合計 | 配分条件の確認 |
|---|---|---|---|---|
| 配分前 | +12 | −8 | +4 | 全体の合計は正 |
| 第一案 | +4 | 0 | +4 | Aは不足にならず、Bの不足も増えない |
| 第二案 | −1 | +5 | +4 | 合計は同じでも、余剰だったAを不足にするため条件を満たさない |
合計欄だけでは第二案の問題を見落とします。各船の配分前後の残高を保存し、選定した検証者に実際の配分の適合性を確認してもらいます。他船の余剰の利用と検証手続は欧州委員会FuelEU Q&Aにも説明されています。
引用した原文を直接確認できます
以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、EU法令については文書ページの統合版と改正履歴も確認してください。
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プーリングは、どの船が黒字でどの船が赤字かを同じ基準で並べて初めて決められます。Bellbookは各船から上がった燃料消費を船隊の一覧にまとめるので、船隊全体の絵が一つの画面に載ります。
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