機関のNOx Tierを決める基準日と大規模な改造の効果(MARPOL附属書VI規則13)

2006年建造船でも、機関を交換すると適用されるNOx Tierが変わる場合があります。船舶の建造日と主要な改造の種類から、適用基準日と基準を確認します。
MARPOL附属書VI規則13は、原則として機関の製造年ではなく船舶の建造日を用います。主要な改造では、作業内容によって適用基準日が変わります。
この記事は排出限度値そのものを扱いません。ここでは、どのTierが掛かるかを決める日付だけを 見ます。
船舶の建造日が適用Tierの基準です
3 Subject to regulation 3 of this Annex, the operation of a marine diesel engine that is installed on a ship constructed on or after 1 January 2000 and prior to 1 January 2011 is prohibited, except when the emission of nitrogen oxides (calculated as the total weighted emission of NO2) from the engine is within the following limits, where n = rated engine speed (crankshaft revolutions per minute):
主語は機関ですが、条件節は船を指しています。installed on a ship constructed on or after 1 January 2000です。機関をいつ作ったかは、この文にありません。
第4項が同じ構造で次の区分を定めます。2011年1月1日以後に建造された船に設置された機関が Tier IIです。その手前の区分は2000年1月1日以後2011年1月1日前に建造された船で、その場所が Tier Iです。
適用範囲には機関の側の条件もあります。出力が130 kWを超える船舶用ディーゼル機関でなければ 規則13は掛かりません(第1.1.1項)。非常用にのみ使う機関と救命艇に設置した機関は外れます (第1.2.1項)。
Tier IIIは建造日の上に海域をもう一つ重ねます
5.1 Subject to regulation 3 of this Annex, in an emission control area designated for Tier III NOx control under paragraph 6 of this regulation (NOx Tier III emission control area), the operation of a marine diesel engine that is installed on a ship is prohibited:
Tier IとTier IIは船がどこにいても掛かります。Tier IIIは指定された海域の中でだけ掛かります。 そのため判定に条件が一つ増えます。船の建造日と、いま船がいる海域です。
| 海域 | その海域でTier IIIが掛かる船 |
|---|---|
| 北米排出規制海域、米国カリブ海排出規制海域 | 2016年1月1日以後に建造 |
| バルト海排出規制海域、北海排出規制海域 | 2021年1月1日以後に建造 |
| そのほかに指定されるNOx Tier III海域 | その海域の採択日以後に建造。指定の改正がより遅い日を定めればその日から |
同じ船が海域を出入りすると、掛かる基準が変わります。そのため第5.3項が記録を求めます。海域に 入るときと出るとき、そして海域の中でon/offの状態が変わるとき、機関のTierと状態を、日付と時刻、 船位とともに主管庁が定める日誌または電子記録簿に記載しなければなりません。
建造日の一般定義とノルウェー海の特則を区別します
建造日は通常、起工日または同等の建造段階に達した日です。起工が2010年、引渡しが2012年の船は、一般の建造日基準ではTier Iに該当します。
ただしMEPC.392(82)はノルウェー海のTier IIIについて別の基準を定めます。建造契約日が2026-03-01以降、契約がなければ起工日が2026-09-01以降、または引渡日が2030-03-01以降の船が対象です。カナダ北極海は2025-01-01以降に建造された船が対象です。両海域の指定改正は2026-03-01に発効しました。SOxの12か月の猶予をNOx Tier IIIに適用しないでください。
規則13は大規模な改造を自らの中で別に定義します
2.1 For the purpose of this regulation, major conversion means a modification on or after 1 January 2000 of a marine diesel engine that has not already been certified to the standards set forth in paragraph 3, 4 or 5.1.1 of this regulation where:
For the purpose of this regulationで始まります。この定義は規則13の中でだけ使います。対象も
狭いです。第3項、第4項、第5.1.1項の基準ですでに証明を受けた機関は、ここから外れます。
三つのうち一つに当たれば大規模な改造です。
- 機関をほかの機関に取り替えるか、機関を追加して設置すること(第2.1.1項)
- 改正NOx技術コード2008が定義する実質的な改造を機関に加えること(第2.1.2項)
- 機関の連続最大出力を元の証明の値より10%を超えて上げること(第2.1.3項)
適用の条項も同じ日付を使います。第1.1.2項は、2000年1月1日以後に大規模な改造を行った機関を 規則13の対象に入れます。ここから外れる道は一つです。新たに載せる機関が元の機関と同一の代替品 であると主管庁が認める場合です。同一かどうかは会社ではなく主管庁が判断します。
機関を取り替えれば改造の時点が、手を入れるだけなら船の建造日が掛かります
2.2 For a major conversion involving the replacement of a marine diesel engine with a non-identical marine diesel engine, or the installation of an additional marine diesel engine, the standards in this regulation at the time of the replacement or addition of the engine shall apply.
取替えと追加は改造の時点の基準を受けます。2006年に建造された船でも、今日ほかの機関に替えれば 今日施行されている基準が掛かります。同じ項の後の文が、取替えの機関にだけ逃げ道を一つ開けます。 その取替えの機関が第5.1.1項の基準を満たせない場合は、第4項のTier IIを満たすものとし、機関が 作成した指針を考慮するとしています。機関を追加して設置する場合に、この緩和はありません。
残りの二つは向きが逆です。
2.3 A marine diesel engine referred to in paragraph 2.1.2 or 2.1.3 of this regulation shall meet the following standards: .1 for ships constructed prior to 1 January 2000, the standards set forth in paragraph 3 of this regulation shall apply; and .2 for ships constructed on or after 1 January 2000, the standards in force at the time the ship was constructed shall apply.
実質的な改造と連続最大出力の引上げは、改造した日の基準に上がりません。船の建造日に戻ります。 2000年1月1日前に建造された船なら第3項、すなわちTier Iです。それ以後に建造された船なら、建造 当時に施行されていた基準です。
大規模な改造という一語が、ここで二つに分かれます。機関を丸ごと替えるか増やせば、船ではなく 改造が日付を作ります。すでにある機関に手を入れるだけなら、日付はふたたび船の建造日です。 だから改造の記録には何をしたかが残っていなければなりません。いつしたかだけでは、どの区分かは 決まりません。
確認しておくこと
上の引用はMARPOL附属書VI統合版(決議MEPC.328(76))から取りました。規則13は印刷22ページから 27ページまで、規則2の定義は4ページから10ページまでです。排出限度値は、定格回転数の区間ごとに 値と式が変わるため、ここには移していません。原文で確認してください。
三つが残ります。実質的な改造が何かは改正NOx技術コード2008が定めます。規則2第2.17項にも 大規模な改造の定義がありますが、それは第4章(エネルギー効率)用で、規則13の定義とは別のもの です。そして主管庁が開く除外が二つあります。一つは、旗国の水域の中だけを航行し、主管庁が代替 のNOx制御措置を定めた船の機関です(第1.2.2項)。もう一つは、2005年5月19日前に建造された船に 設置された機関、またはその前に大規模な改造を行った機関で、その船が旗国の港と海洋ターミナル だけを往来する場合です(第1.3項)。
またMEPC.398(83)によるNOx Technical Codeの認証手続改正が2026-09-01に発効しました。実質的変更を受けた機関や、設置時に認証されていないTierへの再認証では、建造日基準に加えて改正の適用条件と承認手続も確認します。
引用した原文を直接確認できます
以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、実際の適用前にその後の改正と旗国の実施要件を確認してください。
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