船員の苦情の陸上での受付手続と旗国・ILOへ上がる段階(MLC基準A5.2.2)
2026-08-16

船が外国の港に着岸していて、船員の一人が賃金の支払が契約と違うと考えたとします。船内の苦情 処理手続は船に備えてありますが、まだ使っていません。この船員は岸壁で会った職員にそのまま 話してよいのか、話したら次に何が起きるのか。
MLC, 2006の規則5.2.2と基準A5.2.2がこの問いに答えます。答えは苦情が船から陸へ上がる順序で できていて、その順序を飛ばせる場所が中に一緒に書かれています。
苦情は船が寄港した港の職員に直接届けられます
Each Member shall ensure that seafarers on ships calling at a port in the Member’s territory who allege a breach of the requirements of this Convention (including seafarers’ rights) have the right to report such a complaint in order to facilitate a prompt and practical means of redress.
the right to reportです。許可をもらって行うことではなく権利です。そしてその権利を確保する
義務を負うのは船の旗国ではなく、その港が属する国です。
A complaint by a seafarer alleging a breach of the requirements of this Convention (including seafarers’ rights) may be reported to an authorized officer in the port at which the seafarer’s ship has called. In such cases, the authorized officer shall undertake an initial investigation.
受ける人はその港のauthorized officerです。そして受けた人がすることが決まっています。
initial investigationを行います。条文の動詞がshallなので、調査するかどうかは選択では
ありません。
EU の港であれば、もう一枚重なります。
All complaints shall be subject to a rapid initial assessment by the competent authority. This assessment shall make it possible to determine whether a complaint is justified.
まず根拠があるかどうかを分けます。根拠があれば必要な措置をとりますが、その苦情に直接関係する 者が見解を述べられるようにします。明らかに根拠がないと見るときも、そのまま伏せるのではなく、 その決定と理由を苦情を申し出た者に知らせます。
船内の手続を経たかは見るものであって、受付の条件ではありません
Where appropriate, given the nature of the complaint, the initial investigation shall include consideration of whether the on-board complaint procedures provided under Regulation 5.1.5 have been explored. The authorized officer may also conduct a more detailed inspection in accordance with Standard A5.2.1.
文が求めているのはconsiderationです。船内の手続を経たかを最初の調査で見るという意味であって、
経なければ受け付けないという意味ではありません。前にもう一つ条件が付いています。
Where appropriate, given the nature of the complaintです。事案の性質によっては、その見ること
自体を行わないことがあります。
飛ばせる場所は、指針が理由と一緒に書いています。
There should be good reasons for considering a complaint before any on-board complaint procedures have been explored. These would include the inadequacy of, or undue delay in, the internal procedures or the complainant’s fear of reprisal for lodging a complaint.
正当な理由が必要だとしたうえで、その例を三つ挙げます。内部手続が十分でないこと、内部手続が 不当に遅れていること、そして苦情を申し出たことで報復されるのではないかという恐れです。前の 二つは手続の状態で、三つ目は船員の状態です。三つ目が入っているので、会社が手続をよく整えて いるという事実だけでこの場所は閉じません。
一人の事案か船全体の事案かが次の扉を分けます
Where a complaint referred to in Standard A5.2.2 is dealt with by an authorized officer, the officer should first check whether the complaint is of a general nature which concerns all seafarers on the ship, or a category of them, or whether it relates only to the individual case of the seafarer concerned.
まず分けるのは苦情の範囲です。そして分かれた側によって次の段階が変わります。
| 苦情の性質 | 指針が勧める次の段階 |
|---|---|
| 船全体または一部の区分の船員に関わる一般的なもの | 基準A5.2.1に従ったより詳細な検査を検討します |
| その船員一人の個別の事案 | 船内の手続の結果を調べ、使っていなければ利用するよう勧めます |
ここにもう一つ分かれ道があります。調査または検査で基準A5.2.1第6項の範囲に入る不適合が明らかに なれば、その項がそのまま適用されます。苦情から始まった手続が、出港を止める手続に合流します。
船内で解決しなければ旗国が期限内に答えなければなりません
職員は、適当な場合には船内の段階で苦情が解決するよう促します。調査では船長と船舶所有者、その ほか苦情に関係する者に見解を述べる適切な機会を与えなければなりません。一方の言い分だけで進む 構造ではありません。
船内で解決しなければ次の段階が開きます。
Where the provisions of paragraph 4 of this Standard do not apply, and the complaint has not been resolved at the ship-board level, the authorized officer shall forthwith notify the flag State, seeking, within a prescribed deadline, advice and a corrective plan of action.
二つの条件が重なるときに旗国へ移ります。前の節の不適合の経路が適用されないこと、そして船内の 段階で解決していないことです。旗国に求めるものも二つです。助言と是正のための行動計画であり、 定められた期限が付きます。
職員が手を引くことができる場所は指針に書かれています。旗国が自ら処理すると示し、そのための 実効的な手続を備えており、受け入れられる行動計画を提出したときです。三つが揃っている必要が あります。
それでも解決しなければ報告書が事務局長へ行きます
Where the complaint has not been resolved following action taken in accordance with paragraph 5 of this Standard, the port State shall transmit a copy of the authorized officer’s report to the Director-General. The report must be accompanied by any reply received within the prescribed deadline from the competent authority of the flag State.
寄港国が職員の報告書の写しをILO事務局長へ送ります。旗国が期限内に回答を送っていれば、その 回答を一緒に付けます。旗国が答えなかったという事実もこのやり方で残ります。同じ内容がその寄港 国の船舶所有者団体と船員団体にも行き、解決した苦情に関する統計と情報も定期的に提出されます。 条文はその目的まで書いています。関連する救済手続を利用しようとする当事者がその記録を見られる ようにするためです。
EU の港では通報がもう一筋あります。加盟国は、明らかに根拠がないとはいえない苦情とその後続の 措置を旗国の主管庁に知らせ、適当な場合にはILOに写しを送ります。
名前は船長と船舶所有者には届きません
Appropriate steps shall be taken to safeguard the confidentiality of complaints made by seafarers.
MLCは基準だけを置きます。適切な措置をとれということです。EU指令はその措置の最低線を 打ち込みました。
The identity of the complainant shall not be revealed to the master or the shipowner of the ship concerned. The inspector shall take appropriate steps to safeguard the confidentiality of complaints made by seafarers, including ensuring confidentiality during any interviews of seafarers.
二つです。身元を船長や船舶所有者に明かさないこと、そして船員の面談の間も秘密を保つことです。 後ろが付いている理由は、面談そのものが身元を明かしてしまうことがあるからです。誰が呼ばれたか が船から見えれば、名前を言わなくても同じ結果になります。
この条項が前の指針とかみ合います。報復への恐れは船内の手続を飛ばす理由になり、受け付けた後は 身元を伏せることがその恐れを小さくする仕組みになります。
確認しておくこと
上の引用はMLC, 2006統合版の規則5.2.2と基準A5.2.2、指針B5.2.2、そしてEU指令2009/16の第18条から 取りました。基準Aは強制規定で、指針Bはそうではありません。苦情の範囲で分かれる段階と職員が手を 引くことができる場所は指針B5.2.2にあるので、その国がそれをどう受け入れたかを見る必要があります。 誰がその港の職員なのか、苦情をどこに出すのか、定められた期限を何日とするのかは、その国の制度が 埋めます。
苦情が受け付けられたときに確かめられるのは主張ではなく記録です。Bellbookは休息時間の記録と違反判定、給与の計算内訳、雇用契約を船員ごとに置くので、問われたその場で出せます。
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