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船員・労務

乗船前に終えておくべき安全訓練と、船上で埋める慣熟の境目(MLC規則1.3)

2026-08-05

明日乗船する船員の名簿を受け取ったとします。一人は基本安全訓練の証書がまだ出ていません。 もう一人は証書を備えていますが、この船は初めてです。二人のうち誰を乗せられるのか、乗せた あとに何をさせられるのか。

MLC, 2006の規則1.3とSTCWコードA-VI/1がこの問いに答えます。ところが二つの条文は敷居を掛ける 場所が違います。一方は船で働くこと自体に掛け、もう一方は船内の職務を配する瞬間に掛けます。 この記事はその違いを見ます。

規則1.3は敷居を船で働くこと自体に掛けます

  1. Seafarers shall not work on a ship unless they are trained or certified as competent or otherwise qualified to perform their duties.
  1. Seafarers shall not be permitted to work on a ship unless they have successfully completed training for personal safety on board ship.

どちらの項も禁止の形です。備えれば乗せてよいとは書かず、備えなければ船で働けないと書きます。 第1項は職務を遂行する能力を問い、第2項は船内の個人の安全に関する訓練を問います。二つの条件は 互いを代わりません。海技免状を持つ機関士にも第2項はそのまま掛かります。

第2項の述語を見ます。shall not be permitted to workです。許す側が文に隠れています。船員が 自分で何とかする話ではなく、働かせる側が確かめる話だという意味です。そして敷居が掛かる対象は 特定の職務ではなく、その船で働くこと全部です。

規則1.3は訓練の中身をIMOの強制文書に委ねます

  1. Training and certification in accordance with the mandatory instruments adopted by the International Maritime Organization shall be considered as meeting the requirements of paragraphs 1 and 2 of this Regulation.

規則1.3は、どの科目を修めるべきかを自ら定めません。IMOが採択した強制文書による訓練と証明を、 第1項と第2項を満たすものとみなすとだけ書きます。だから敷居の実際の中身はSTCWコードで読みます。

ところがSTCWコードA-VI/1は時点を別の語で書きます。乗船ではなく before being assigned to shipboard duties、つまり船内の職務に配される前です。同じ節がこの 時点に二つを掛けており、二つは埋められる場所が正反対です。

基本訓練は証拠を求めるので船では作れません

2 Seafarers employed or engaged in any capacity on board ship on the business of that ship as part of the ship’s complement with designated safety or pollution-prevention duties in the operation of the ship shall, before being assigned to any shipboard duties:

対象が狭い。船舶の運航において指定された安全の職務または汚染防止の職務を持ち、定員の一部と して乗り組む船員です。この人たちが受けるべきものは承認された基本訓練です。条文はここで止まら ず、もう一行を足します。

.2 be required to provide evidence of having achieved the required standard of competence to undertake the tasks, duties and responsibilities listed in column 1 of tables A-VI/1-1, A-VI/1-2, A-VI/1-3 and A-VI/1-4 through:

証拠の形まで条文が定めます。表の第3欄と第4欄にある評価の方法と基準に従った能力の実演、そして 承認された訓練計画の一部として受ける試験または継続的な評価です。

条文が書いた時点は乗船ではなく職務の配置の前です。ところが承認された計画の中で実演と試験を 経なければ証拠は生まれません。船に上がったその日に作れる品物ではありません。だからこの敷居は 乗船前に陸上で終わっている必要があります。規則1.3の第2項が乗船そのものを塞ぐ敷居として置いた のも、この訓練です。

慣熟はその船を特定するので陸上では終えられません

1 Before being assigned to shipboard duties, all persons employed or engaged on a seagoing ship, other than passengers, shall receive approved familiarization training in personal survival techniques or receive sufficient information and instruction, taking account of the guidance given in part B, to be able to:

対象がall personsです。船員かどうか、指定された安全の職務があるかを問わず、旅客だけが外れ ます。修得の形にも選択肢があります。承認された慣熟訓練を受けるか、十分な情報と指示を受ければ よい。前の節に付いていた実演と試験の要求はここにはありません。

備えるべき能力は七つ列挙されており、その最後の項目がこの節の性格を示します。

.7 close and open the fire, weathertight and watertight doors fitted in the particular ship other than those for hull openings.

fitted in the particular shipです。その船に設けられた戸です。集合場所と乗艇場所と非常脱出 経路を識別せよという項目も、救命胴衣を見つけて着用せよという項目も同じ性質です。船が定まら なければ指す対象がありません。陸上の教室で先に終えることはできず、前の船で受けた慣熟で代える こともできません。

二つの敷居は証拠の欄で分かれます

区分 基本訓練(A-VI/1第2項) 安全の慣熟(A-VI/1第1項)
対象 指定された安全・汚染防止の職務を持つ定員 旅客を除く乗船者の全員
修得の形 承認された基本訓練または指示 承認された慣熟訓練、または十分な情報と指示
条文が求める証拠 能力の実演と試験または継続的な評価 条文が形を定めていない
埋められる場所 承認された計画のある陸上 その船員が上がったその船

時点を書いた文は二つでほぼ同じです。分かれる欄は証拠です。基本訓練は承認された計画と試験を 通らなければならないので、証書という品物が残ります。慣熟は条文が証拠の形を定めていないので、 その船が何を残すかに掛かります。

名簿の前で判断が分かれる地点もここです。証書のない人は乗船前に止まります。証書があっても この船が初めての人は、職務を配する前に慣熟を受ける必要があり、その事実を船が残さなければ 後で見せるものがありません。

確認しておくこと

上の引用はMLC, 2006統合版(2022年改正を含む)の印刷20ページと、STCW/CONF.2/34コードA-VI/1の 印刷180ページ・181ページから取りました。規則1.3とA-VI/1は敷居を立てますが、承認された訓練 機関の指定と証書の様式、そして慣熟をどの記録として残すかは、旗国の法令と主管庁が埋めます。 A-VI/1の第5項は主管庁が一部の船にこの節の要件の一部を免除できるよう開いているので、その船が 免除の範囲に入るかも併せて見る必要があります。その船の旗国が慣熟の記録の様式を定めているか、 会社の安全管理システムがその記録をどこに残せと言っているかが、実際の判断の出発点です。

Bellbookは船員の証書の期限と船上で実施した訓練の記録を一人の下にまとめます

乗船前に終えておくべきものは証書で確かめ、船で埋めるものは記録として残ります。Bellbookは船員別の証書と有効期限を乗船前に一か所で見せ、船内で実施した訓練を日付と参加者まで残します。

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