船員の雇用契約(SEA)の必須記載事項と船内備置き書類(MLC基準A2.1)
2026-07-09

寄港地で検査官が乗り込んできて、三等航海士の雇用契約を見せるよう求めます。原本は どこにあるべきか、船内には何がなければならないか、契約には何が書かれていなければ ならないか。MLC, 2006の規則2.1と基準A2.1が、書類の単位で答えています。この記事では その書類を一つずつたどります。
原本は2部です。船舶所有者と船員が1部ずつ持ちます
(c) the shipowner and seafarer concerned shall each have a signed original of the seafarers’ employment agreement;
基準A2.1第1項(c)です。署名するのは船員と、船舶所有者又はその代表者です(第1項(a))。 被用者でない船員の場合は、契約上又は類似の取決めの証拠がその代わりになります。署名 の前には契約を検討し、助言を求める機会が保障されなければならず(規則2.1第2項、第1項 (b))、自己の権利及び責任を十分に理解した上で自由に契約を締結できるよう、必要な便宜 も与えられなければなりません。
船内には写しがあり、寄港地の検査官も閲覧できなければなりません
measures shall be taken to ensure that clear information as to the conditions of their employment can be easily obtained on board by seafarers, including the ship’s master, and that such information, including a copy of the seafarers’ employment agreement, is also accessible for review by officers of a competent authority, including those in ports to be visited;
第1項(d)です。契約書が会社の引き出しにしかなければ、この要件は満たせません。船長を 含む船員が、船内で自己の雇用条件に関する明確な情報を容易に得られなければならず、 その情報には契約の写しが含まれ、寄港する港の権限のある機関の職員も閲覧できなければ なりません。
団体交渉の合意が契約の全部又は一部を構成する場合には、その写しも船内に備えます (第2項)。契約と団体交渉の合意の言語が英語でない場合には、二つのものを英語でも利用 可能にします。契約の標準様式の写し、そして団体交渉の合意のうち規則5.2に基づく寄港国 による検査の対象となる部分です。国内の航行にのみ従事する船舶は例外です。
11の記載事項は条約が底を定め、国内法令がその上に積みます
第4項です。各加盟国は契約に含まれるべき事項を法令で定めますが、いかなる場合にも次の 11の事項が含まれなければなりません。
| 項 | 記載事項 |
|---|---|
| (a) | 船員の氏名、生年月日又は年齢、出生地 |
| (b) | 船舶所有者の名称及び住所 |
| (c) | 契約が締結された場所及び年月日 |
| (d) | 船員の従事する職務 |
| (e) | 賃金の額。適用可能な場合には賃金の計算に用いられる方法 |
| (f) | 年次有給休暇の日数。適用可能な場合にはその計算に用いられる方法 |
| (g) | 契約の終了及びその条件 |
| (h) | 船舶所有者により船員に与えられる健康の保護及び社会保障による保護に関する給付 |
| (i) | 船員の送還される権利 |
| (j) | 団体交渉の合意への言及。適用可能な場合 |
| (k) | その他国内法令に定める事項 |
(g)は契約の形態によって三つに分かれます。期間を定めない契約であれば、各当事者が契約 を終了させることができる条件と予告期間。期間を定めた契約であれば、その満了の日。 特定の航行についての契約であれば、目的港と、そこに到達した後に船員が解雇されるまで に経過しなければならない期間です。
予告期間は7日間を下回れず、船舶所有者側を船員より短くすることもできません
The duration of these minimum periods shall be determined after consultation with the shipowners’ and seafarers’ organizations concerned, but shall not be shorter than seven days.
第5項です。早期の終了のための最も短い予告期間は法令で定めますが、7日間が底です。 方向も決まっています。期間を定めない契約において、船舶所有者側の予告期間は船員側の 予告期間よりも短くてはなりません(第4項(g)(i))。
より短い予告や予告なしの終了は、国内法令又は団体交渉の合意が認める状況においてのみ 可能です(第6項)。その状況を決定するに当たり、加盟国は、船員が人道的な又は他の緊急の 理由のために、不利益を受けることなく、より短い予告で契約を終了させる必要性を考慮 しなければなりません。
雇用の記録の文書に、勤務の成績と賃金を書いてはなりません
The document referred to in paragraph 1(e) of this Standard shall not contain any statement as to the quality of the seafarers’ work or as to their wages.
船員は、その船舶における自己の雇用の記録が記載された文書を交付されます(第1項(e))。 ところが第3項が、この文書に記述してはならないものを定めています。勤務の成績に関する 事項と賃金です。指針B2.1.1が理由を見せてくれます。この文書は、更なる仕事を得ること、 又は昇進に必要な海上での勤務の要件を満たすことを証明するために使われるものです。 評価書ではなく経歴の証明書であり、英語による訳文を含めることを勧告している理由も 同じです。船員手帳がこの要件を満たすことができます。文書の形式、記録すべき事項、 記入する方法は国内法令で定めます(第3項)。
海賊に抑留されている間も、契約は終わりません
a seafarer’s employment agreement shall continue to have effect while a seafarer is held captive on or off the ship as a result of acts of piracy or armed robbery against ships, regardless of whether the date fixed for its expiry has passed or either party has given notice to suspend or terminate it.
第7項です。2018年の改正で入った規定です。海賊行為又は船舶に対する武装強盗の結果と して船員が船内又は船外で抑留されている間、契約は効力を持ち続けます。満了の日が過ぎ ていても、いずれかの当事者が停止や終了を通告していても同じです。海賊行為の定義は 1982年の国連海洋法条約に従い、船舶に対する武装強盗は同じ項が直接定義しています。 抑留中も賃金の支払いが続くことは、賃金側の基準A2.2が別に定めています。
契約の様式と細目は国内法令の領分です(第3項、第4項(k))。この記事の記載事項と期間は 条約が定めた底ですから、実際の契約は旗国の法令と適用される団体交渉の合意をあわせて 確認する必要があります。
船員ごとに職務、賃金項目、乗船と下船の日付が人事記録カードに蓄積されます。第1項(e)の雇用の記録の文書を作るとき、必要な船名、職務、日付がすでに一か所に整理されていれば、探すのにかかる時間がなくなります。
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