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船員の賃金支払間隔・明細・為替換算率・時間外手当のMLC基準

架空の送金例です。賃金2,500単位を別の通貨へ送る場合、適用レート1.35なら3,375単位、比較レート1.39なら3,475単位となり、差は100単位です。この計算だけで違反とは判断せず、送金サービスのレート・手数料・適用根拠を照合します。

この差がどこに記載されるべきで、どの基準を満たすべきかを、MLC, 2006が定めています。この 記事は基準A2.2(強制規定)と指針B2.2の文をそのまま置き、給与担当者が毎月行う四つの仕事 (支払、明細、送金、控除)にそれぞれ何が掛かるかを整理します。

賃金は一か月を超えられず、明細も毎月です

基準A2.2第1項の表現はat no greater than monthly intervalsです。月1回は慣行ではなく 上限です。契約や団体交渉の合意で二か月に一度と定めることはできません。

明細は支払とは別の義務です。

  1. Seafarers shall be given a monthly account of the payments due and the amounts paid, including wages, additional payments and the rate of exchange used where payment has been made in a currency or at a rate different from the one agreed to.

入るべきものは三つです。支払われるべき金額、実際に支払われた金額と追加の給付、そして合意 したものと異なる通貨や換算率で支払った場合には用いた為替換算率です。換算率が明細の 記載事項であることが、次の節の出発点になります。

抑留にも例外はありません。海賊や武装強盗により船員が抑留された期間中も、賃金と割当額の 送金は支払われ続けます(2018年の改正で入った第7項)。

明細の記載義務と送金サービスの基準を区別します

A2.2第2項は合意と異なる通貨やレートで支払う場合、明細に適用レートを記載するよう求めます。第5項の合理的な手数料と市場レート・公表公式レートの基準は、第3・4項の送金サービスに関する規定です。すべての賃金換算に一律のレートを定める独立した規則として扱うべきではありません。

そのサービスでは別段の定めがない限り、適用法令に従い一般市場レートまたは公表公式レートを用い、船員に不利であってはなりません。明細、送金指示、受取額、手数料を照合します。

送金の経路は船員ではなく船舶所有者が用意します

基準A2.2第3項と第4項は、船員が収入の全部または一部を家族へ送る手段を船舶所有者が 提供するよう定めます。雇用の開始時でも雇用中でも、船員が希望すれば賃金の一定割合を定期 送金に割り当てられなければならず、割当額は船員が指定した者に所定の時期に直接送金しなければ なりません。

船員が自力で送るのではなく、会社が制度を用意する義務です。送金が遅れたり、指定した者以外に 送られたりすれば、それ自体が第4項の要件を満たしません。

ここからは指針です。それでも数字は全部こちらにあります

ここまでがPart Aの強制規定です。以下の時間外手当・統合賃金・控除は指針B2.2にあります。 指針それ自体に拘束力はありませんが、賃金に関する国内法令を制定する旗国はこの指針に妥当な 考慮を払わなければならず(A2.2第6項)、時間や倍率といった数字は全部指針の側にあります。 旗国の法令や団体交渉の合意がこの値を取り込めば、そこから拘束力が生まれます。

時間外手当は時間当たり基本給の最低1.25倍です

まず基本給の定義です。

(b) basic pay or wages means the pay, however composed, for normal hours of work; it does not include payments for overtime worked, bonuses, allowances, paid leave or any other additional remuneration;

時間外手当、賞与、手当、有給休暇は基本給ではありません。1.25倍の底辺になる値は、これらの 項目を除いて計算しなければならないという意味です。

指針B2.2.2第1項が計算の枠を定めます。賃金計算上の正常な労働時間は海上でも停泊中でも一日 8時間を超えるべきではなく、基本給がカバーする週当たりの時間は48時間を超えるべきでは ありません。そして倍率が出てきます。

(c) the rate or rates of compensation for overtime, which should be not less than one and one-quarter times the basic pay or wages per hour, should be prescribed by national laws or regulations or by collective agreements, if applicable; and

時間当たりの基本給が6.00ドルなら、時間外手当の下限は7.50ドルです。契約書に7.00ドルと印刷 されていれば、それだけで指針に達しません。

記録の要件も同じ項にあります。時間外労働の記録は船長または船長が指名した者が保管し、船員が 一か月以内の間隔で署名します。休息時間の記録と同じ構造で、船員の署名がない記録は要件を 満たしません。

包括賃金にも最低基準が適用されます

時間外手当を給与に合算して定める方式(consolidated wage、統合賃金)も指針がそのまま扱い ます(B2.2.2第2項)。三つが掛かります。

  • 雇用契約は、その給与で何時間の労働を期待するのかを明示すべきです
  • 合算分を超える時間外労働には同じ1.25倍の原則が適用され、給与に含まれた時間外分にも同じ原則が適用されます
  • 正常な労働時間に相当する部分は、適用される最低賃金を下回るべきではありません

合算すれば計算が消えるのではなく、分解したときに各部分が下限を守っているか検算できなければ ならないという意味です。一部だけ合算した給与なら、時間外記録の保管義務もそのまま残ります。

控除は根拠と告知が先で、禁止が二行あります

指針B2.2.2第4項(h)は控除の条件を定めます。国内法令または適用される団体交渉の合意に明示の 根拠があり、船員がその条件を告知されており、合計が定められた上限を超えないことです。

禁止は二行です。

(i) no deductions should be made from a seafarer’s remuneration in respect of obtaining or retaining employment;

雇用を得ることや維持することの対価としての控除は禁止です。採用手数料を給与から回収する 構図がここに掛かります。続く(j)は、国内法令や団体交渉の合意が認めていない罰金を禁止します。

同じ項に支払側の原則もあります。下船で雇用が終われば残りの報酬は不当な遅延なく支払うべきで あり(d)、船員が書面で別途求めない限り、賃金は船員が指定した銀行口座へ直接支払うべきです(f)。

確認しておくこと

引用はMLC, 2006の統合版(2022年改正を含む)印刷27~31ページから取りました。A2.2は強制規定 でB2.2は指針なので、実際に拘束力を持つ数字は旗国の法令と適用される団体交渉の合意で確認する 必要があります。有能船員(AB)の月額基本給の下限はILO合同海事委員会が定期的に定める額に 従うべきだという指針(B2.2.4)が別にあるので、その最新の公表値も同じ確認リストに置く価値が あります。

引用した原文を直接確認できます

以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、実際の適用前にその後の改正と旗国の実施要件を確認してください。

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Bellbookは賃金契約と毎月の計算内訳を項目ごとに残します

船員ごとに賃金契約を保存し、毎月の給与を項目別に計算します。控除は金額の根拠が設定にある項目だけ行が生まれ、先月の値を無条件に引き継ぐことはありません。計算内訳が月ごとに残るので、明細を後から遡れます。

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