IMO DCS 附属書 IX の改正項目と船上でのデータ収集方法
2026-07-02

IMO 船舶燃料油使用量データ収集制度(DCS)の報告様式が変わりました。決議 MEPC.385(81) が MARPOL 附属書 VI の 附属書 IX を全面的に差し替えました。決議本文の表現どおり “12 Appendix IX is replaced by the following” です。
日程は決議の前文にあります。2024 年 3 月 22 日採択、MARPOL 第 16 条(2)(f)(iii) により 2025 年 2 月 1 日にみなし受諾、2025 年 8 月 1 日発効(決議 3 項)。決議 4 項はここに 1 行を加えています。
4 ALSO INVITES the Parties to consider the early application of the amendments to appendix IX with regard to information to be submitted to the IMO Ship Fuel Oil Consumption Database from 1 January 2025;
つまり 完全な暦年としては 2026 年分から新様式となり、旗国が早期適用を採用していれば 2025 年分からです。どちらに当たるかは旗国と認定機関の指針で確認してください。
油種別の合計だけでは様式が埋まりません
差し替え後の附属書 IX における燃料消費の項目です。太字が今回入った欄です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 油種別の総消費量 | 既存 |
| 油種別・消費先別の総消費量 | Main Engine(s) / Auxiliary Engine(s)·Generator(s) / Oil-fired Boiler(s) / Others (specify) |
| not under way 状態の油種別・消費先別消費量 | 上と同じ 4 つの消費先に再度区分 |
| 総航行距離(nm) | 既存 |
| Laden distance travelled (nm) | 新規、任意提出 |
| Hours under way | 既存 |
| 陸上電力受電総量(kWh) | 新規 |
要目の項目にも Net tonnage(NT)、Attained EEXI、Ice class が追加されました。
規則 28(CII)が適用される船舶は、これに加えて Total transport work、適用される CII の種類(AER または cgDIST)、要求年間運航 CII、補正前後の達成 CII、革新的技術の搭載有無、運航炭素強度の格付けを同じ様式の中で提出します。決議の表題がこの改正を “inclusion of data on transport work and enhanced granularity” と呼ぶのはそのためです。
消費先別の消費量は 12 月に作れません
この改正の性格は計算式の変更ではなく、収集方法の変更です。この違いは大きいです。
計算式が変わったのであれば、年末に既存のデータで計算し直せば済みます。しかし主機と発電機とボイラーを分けた値は、その年のあいだ分けて受け取っていなければ 12 月に作り出す方法がありません。合計から逆算できる値ではないからです。not under way 区間の消費量も同じです。航海中と停泊中を区別して記録していなければ、年末に分ける根拠がありません。
報告期限が迫ってから確認するのでは遅すぎます。規則 27.3 は 暦年終了後 3 か月以内に主管庁または認定機関へ集計値を電子的に報告することを求めています。3 月に見つかった空白は、その年のデータを取り戻す手段がありません。
集計値の背後にある元データも 12 か月保管します
提出するのは集計値ですが、規則 27.8 はその下の元データを別に求めています。
8 … the disaggregated data that underlies the reported data noted in appendix IX to this Annex for the previous calendar year shall be readily accessible for a period of not less than 12 months from the end of that calendar year and be made available to the Administration upon request.
暦年終了後、少なくとも 12 か月のあいだ直ちに参照できる状態に置き、主管庁の要請があれば提出しなければなりません。附属書 IX が消費先別と not under way に細分化された以上、元データも同じ細かさを保った形で残っていなければこの要求を満たせません。集計を終えたからといって元の正午報告を整理してしまう運用は、この条項に合いません。
附属書 IX が変われば SEEMP Part I も変えます
規則 26.2 は、5,000 総トン以上の船舶の SEEMP に 規則 27.1 が求めるデータを収集する方法論と、主管庁へ報告する手順の記述を含めることを求めています。
収集の対象項目が変わったのですから、SEEMP に書かれた方法論も併せて変える必要があります。新しい欄を埋め始めていても、SEEMP の方法論の記述が旧項目のままであれば、文書と実際が食い違っている状態です。
CII が適用される船種には規則 26.3 が追加でかかります。この項の .3 は SEEMP を “subject to verification and company audits”、すなわち検証と会社監査の対象と位置づけます。ですから文書と実際が食い違っていれば、審査で指摘されます。
適用対象は 5,000 総トン以上です
規則 27.1 の文言です。
1 From calendar year 2019, each ship of 5,000 gross tonnage and above shall collect the data specified in appendix IX to this Annex, for that and each subsequent calendar year or portion thereof, as appropriate according to the methodology included in the SEEMP.
“or portion thereof” が付いているのは規則 27.4 と 27.5 のためです。主管庁が変わればその日付で前の主管庁分の期間を、会社が変わればその日付で当該会社分の期間を別に報告しなければなりません。両方が同時に起きた場合は規則 27.6 により主管庁変更の規定を適用します。管理の移管が予定されているなら、移管日で期間を切れるようにデータを整理しておきます。
報告のあとの流れも規定にあります。規則 27.9 は、主管庁が適合確認書(SoC)を発行してから 1 か月以内に報告データを IMO 船舶燃料油使用量データベースへ送ることを求めています。
データ公開の条項が新設されました
同じ決議が規則 27 に 14 項と 15 項を新設しました。
14 On an ad hoc basis, the Secretary-General of the Organization may share data with analytical consultancies and research entities, under strict confidentiality rules.
15 The Secretary-General of the Organization, on the request of a company, shall grant access to the fuel oil consumption reports of the company’s owned ship(s) in a non-anonymized form to the general public.
14 項は、事務局長が厳格な守秘条件のもとで分析機関・研究機関とデータを共有できるようにしたものです。15 項は、会社が要請すればその会社が所有する船舶の報告書を非匿名の形で一般に公開するというもので、会社の要請があって初めて動く条項です。
今すぐ確認すること
- 正午報告または日々の消費記録が、主機・発電機・ボイラー・その他に分かれているか
- 航海中と停泊中の消費を区別できるか(航海の開始時刻・終了時刻が記録に残るか)
- 陸上電力を受ける船なら、受電量(kWh)が記録されているか
- SEEMP Part I のデータ収集方法論の記述が、新しい附属書 IX の項目を反映しているか
- 旗国・認定機関が 2025 年分の早期適用を求めているか
出典
- MEPC.385(81)(2024-03-22 採択、2025-08-01 発効)。附属書 IX の差し替え、規則 27 の 14・15 項新設。原文
MEPC.385(81).pdfの PDF 4-6 ページ(文書表示 3-5 ページ)で照合。 - MEPC.328(76) 2021 年改正 MARPOL 附属書 VI。規則 26(SEEMP)、規則 27(収集・報告)。原文
MEPC.328(76).pdfpp.45-46 で照合。 - 様式と適用時期は改訂版、および旗国が早期適用を採用しているかによって変わります。実際の提出は旗国と認定機関の最新の指針を基準としてください。
正午報告と入出港報告で主機・発電機・ボイラー・その他を別々に受け取り、航海の開始時刻と終了時刻で under way の区間を切り分けます。航海記録がそのまま DCS の集計軸になるため、年末に元データを作り直す必要がありません。
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