船舶内における苦情に関する手続の段階と、その段階を飛ばす権利(MLC規則5.1.5)
2026-07-19

船員が船で問題を申し立てたとき、その言葉がどこへ行くのか。部門長を経なければならないのか、 船長へ直接行けるのか、会社の外へ出られるのか。MLC, 2006の規則5.1.5と基準A5.1.5が、経路を定める と同時に、その経路を飛ばす権利を同じ場所に書いています。
低い段階で解決しつつ、飛ばす権利は常に残ります
Such procedures shall seek to resolve complaints at the lowest level possible. However, in all cases, seafarers shall have a right to complain directly to the master and, where they consider it necessary, to appropriate external authorities.
前の文が手続の設計原則で、後ろの文がその原則に掛かった但書です。in all casesです。会社の
作った手続がどんな順序を定めていても、船長へ直接申し立てる権利はその順序に従属しません。
外部機関も同じです。ただし条件が一つ付きます。船員が必要と判断する場合です。必要かどうかを 判断する主体が船員であることが条文に書かれています。
この構造は指針B5.1.5に理由とともに書かれています。苦情の多くが、その苦情を受けるべき人や船長 自身に向かうというものです。手続の次の段階が相手方であるとき、その段階を強いれば手続は働きま せん。
迫害の定義が広く取られています
The term “victimization” covers any adverse action taken by any person with respect to a seafarer for lodging a complaint which is not manifestly vexatious or maliciously made.
三か所を見る必要があります。第一に、行為者がany personです。会社や上級者に限りません。第二に、
行為がany adverse actionです。懲戒のような公式の処分に狭めません。第三に、保護される苦情の
範囲です。明らかに嫌がらせ目的であるか悪意で行われたものでなければ、保護の中に入ります。
三つ目が実務では重要です。苦情が結果として根拠のないものと分かっても、その事実だけで保護が消え るわけではありません。外へ押し出されるのは、明らかに嫌がらせ目的であるか悪意で行われた場合です。
規則5.1.5の第2項が旗国に迫害を禁止し処罰するよう求めます。禁止だけでなく処罰まで書かれています。
手続の進行中に同伴と代理を受ける権利があります
基準A5.1.5の第3項が、手続の進行中に船員が同伴され、または代理される権利を手続に含めるよう定め ます。指針B5.1.5はその相手を、その船にいる他の船員のうち本人が選んだ者と読み、いつでもその権利 を持つと書きます。
船員に渡すものは契約書だけではありません
- In addition to a copy of their seafarers’ employment agreement, all seafarers shall be provided with a copy of the on-board complaint procedures applicable on the ship. This shall include contact information for the competent authority in the flag State and, where different, in the seafarers’ country of residence, and the name of a person or persons on board the ship who can, on a confidential basis, provide seafarers with impartial advice on their complaint and otherwise assist them in following the complaint procedures available to them on board the ship.
渡すものが四筋です。
| 渡すもの | 条件 |
|---|---|
| 船員の雇用契約書の写し | すべての船員 |
| その船に適用される船舶内の苦情手続の写し | すべての船員 |
| 旗国の権限のある機関の連絡先 | 手続の写しに含める |
| 船員の居住国の機関の連絡先 | 旗国と異なるとき手続の写しに含める |
ここに人の名前がもう一つ付きます。船内で秘密を守りつつ苦情について公正な助言を与え、手続をたど るのを助けられる人の名前です。役職ではなく名前を書けというのが条文の求めです。
指針が描く段階と記録の要求
指針B5.1.5は模範となる手続をこう描きます。苦情はその船員の所属する部門の長または上級の職員に 申し立てられ、その人が事案の軽重に応じた定められた期限内に解決を試みます。解決しなければ船長へ 移り、船長が自ら扱います。船で解決しなければ陸上の船舶所有者へ移り、船舶所有者にも適切な期限が 与えられます。
記録への要求も同じ場所にあります。
(e) all complaints and the decisions on them should be recorded and a copy provided to the seafarer concerned;
すべての苦情とそれに対する決定を記録し、写しを当該船員に渡すというものです。指針なので強制では ありませんが、これがなければ前の段階が実際に踏まれたかを確かめる方法が残りません。
手続が他の救済手段を塞ぎません
規則5.1.5の第3項が、この規則と関連するコードの規定は、船員が適切と考える法的手段によって救済を 求める権利を害さないと書きます。船内の手続をすべて踏まなければ外へ出られないという構造では ありません。
確認しておくこと
上の引用はMLC, 2006統合版(2022年改正を含む)の印刷91ページから93ページで取りました。手続の具体 的な形と期限は旗国の法令と団体交渉の合意が定めます。その船の手続の写しに旗国と居住国の連絡先が 実際に書かれているか、船内の助言者の名前が空でないか、そして過去の苦情とその決定が記録として 残っているかが、実際の判断の出発点です。
条文は雇用契約書の写しと苦情手続の写しを船員に渡すよう求めます。Bellbookは船員の雇用契約を本人のアカウントに置くので、紙を探し直さなくても乗船中に開けます。
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