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船員・労務

船員の休息時間 24 時間・7 日の上限と違反の判定方法

2026-07-03

休息時間の規定は、数字そのものは覚えやすいものです。24 時間で 10 時間、7 日で 77 時間です。 ところがこの数字を暦日の合計で計算すると、規定が求めているものとは違う答えが出ます。条文が 定めているのは日付ごとの合計ではなく、どこで切っても成り立たなければならない窓です。

この記事では MLC, 2006 の基準 A2.3 と STCW コード A-VIII/1 の文言をそのまま並べ、二つの規定が 実際に何を求めているのかを整理します。

24 時間と 7 日は暦ではなく、どこで切ってもよい窓です

MLC 基準 A2.3 第 5 項の表現は in any 24-hour periodin any seven-day period です。

  1. The limits on hours of work or rest shall be as follows: (a) maximum hours of work shall not exceed: (i) 14 hours in any 24-hour period; and (ii) 72 hours in any seven-day period; or (b) minimum hours of rest shall not be less than: (i) ten hours in any 24-hour period; and (ii) 77 hours in any seven-day period.

any は「任意の」です。0 時から 24 時までの一日ではなく、起点をどこに置いても成り立たなければ なりません。ですから深夜 0 時で区切った合計が両日とも 10 時間を超えていても、二日にまたがる 24 時間の窓では 10 時間に届かないことがあります。

例を見ます。初日の 20 時から翌日の 4 時まで 8 時間休み、初日の日中にさらに 2 時間休んだとすると、 暦日の合計は 10 時間です。翌日も同じ配置なら合計は同じく 10 時間です。ところが初日の 12 時から 翌日の 12 時までを窓として切ると、その中に入る休息は 8 時間だけということがあります。暦日の 計算はこの窓を作らないので通してしまい、規定は違反とみなします。

判定を正しく行うには、窓を少しずつ動かして最小値を探す必要があります。休息の合計は窓の起点に 対して区分的に線形で、傾きが変わるのは勤務と休息が切り替わる点だけなので、その転換点をすべて 走査すれば本当の最小値が出ます。1 時間刻みだけで走査すると、30 分ずれた最悪の窓を見落とします。

労働時間の上限と休息時間の下限は週の天井が 19 時間ずれます

上の第 5 項は (a) と (b) の間に or を置いています。旗国は労働時間の上限を定めるか、 休息時間の下限を定めます。両方を適用するのではありません。

この二つは同じ規則を書き換えたものではありません。7 日は 168 時間です。休息の下限方式で 77 時間を残すと、労働に使える時間は最大で 91 時間です。労働の上限方式の天井は 72 時間です。 同じ船でどちらの方式の適用を受けるかによって、週の上限が 19 時間ずれます。

正確には 91 時間も上限ではなく、それより短くなります。A2.3 第 1 項 (b) は休息時間を労働時間 以外の時間と定義した上で this term does not include short breaks と書いています。短い休憩は 労働でも休息でもないため、168 時間から休息 77 時間を引いた値がそのまま労働に使える時間になる わけではありません。

ですから記録を検査する前に、その船の旗国がどちらの方式を選んだのかを確認する必要があります。 船内に掲示する作業配置表にも、その値を記載することになっています(A2.3 第 10 項 (b))。

合計が足りていても、分割回数と間隔で引っかかります

24 時間に 10 時間を確保していても、その 10 時間をどう分けたかは別の要件です。

  1. Hours of rest may be divided into no more than two periods, one of which shall be at least six hours in length, and the interval between consecutive periods of rest shall not exceed 14 hours.

三つが同時に効きます。休息は二つの区間までしか分割できず、そのうち一つは 6 時間以上でなければ ならず、連続する二つの休息の間隔は 14 時間を超えられません。STCW コード A-VIII/1 第 3 項も同じ 文です。

三つめの要件は合計とは無関係に独立して効きます。休息をどれだけ確保していても、勤務が 14 時間 続けばそれ自体が違反です。4 時間ごとに交代する当直配置ではこの条件は問題になりませんが、 入出港や荷役で当直配置が崩れた日に引っかかります。

そのため違反は一種類ではなく五種類に分かれます。

違反 根拠 判定に使う値
10 時間不足 A2.3 第 5 項、A-VIII/1 第 2 項 任意の 24 時間の窓の最小休息
77 時間不足 A2.3 第 5 項、A-VIII/1 第 2 項 任意の 7 日の窓の最小休息
二区間超過 A2.3 第 6 項、A-VIII/1 第 3 項 その日の休息区間の数
6 時間の区間なし A2.3 第 6 項、A-VIII/1 第 3 項 最も長い休息区間
14 時間の間隔超過 A2.3 第 6 項、A-VIII/1 第 3 項 休息の間の最長勤務

どれに引っかかったかによって直し方が違うので、「その日は違反」と一行で書くと、次に何を 変えればよいのかがわかりません。

STCW と MLC は適用対象が違います

数字が同じなので一つの規定としてまとめて見たくなりますが、適用範囲が違います。

STCW コード A-VIII/1 第 2 項は対象をこう書いています。

2 All persons who are assigned duty as officer in charge of a watch or as a rating forming part of a watch and those whose duties involve designated safety, prevention of pollution and security duties shall be provided with a rest period of not less than:

当直責任者、当直を構成する部員、そして指定された安全・汚染防止・保安の業務を担う者です。 MLC 基準 A2.3 は船員全体を対象とします。当直に入らない司厨部や事務部の船員も、MLC の側では 同じ上限の適用を受けます。

ですから当直表だけで休息時間の遵守を説明することはできません。当直のない職務の記録も そろっている必要があります。

例外を開くとき、STCW は数字を示し MLC は手続を示します

どちらの規定も例外を認めますが、その方式が違います。

STCW コード A-VIII/1 第 9 項は、例外の限界を数字で固定します。

9 Parties may allow exceptions from the required hours of rest in paragraphs 2.2 and 3 above provided that the rest period is not less than 70 hours in any 7-day period.

同じ項が続けて定める条件は四つです。週の休息に関する例外は 2 週を超えて連続させられず、二つの 例外の間隔は例外の期間の 2 倍以上でなければなりません。10 時間側の例外では休息を三区間まで 分割できますが、一つは 6 時間以上、他の二区間はそれぞれ 1 時間以上で、14 時間の間隔はそのまま 維持されます。そして例外は 7 日のうち二つの 24 時間期間を超えて及びません。

MLC 基準 A2.3 第 13 項は、数字ではなく手続を定めます。例外は国内法令、または権限のある機関が 認めもしくは登録した労働協約によってのみ開きます。会社と船員が個別に合意して開くものでは ありません。

つまり例外を適用した記録には、根拠が二つ必要です。どの例外規定なのか、そしてその例外を許した 旗国の根拠が何かです。

訓練と呼出しは、削った休息を戻さなければなりません

招集訓練と消火・救命艇の訓練は、休息時間を妨げない方法で行うこととされています(A2.3 第 7 項、 A-VIII/1 第 4 項)。訓練が規定上の義務であることは、休息時間の要件を免除しません。

機関室無人化のように船員が呼出し待機の状態にあるときは、条件がもう一つ付きます。呼出しに よって通常の休息が妨げられた場合は、それに見合う代償休息を与えなければなりません(A2.3 第 8 項、A-VIII/1 第 6 項)。呼出しがあった事実だけを書いて代償休息を書かなければ、記録が 要件を証明しません。

船長の権限も同じ構造です。船舶と船内の人、貨物の即時の安全のためであれば、船長は休息の配置を停止し、 必要な時間だけ作業をさせることができます(A2.3 第 14 項、A-VIII/1 第 8 項)。ただし同じ規定は、 通常の状態に戻った後は実行可能な限り速やかに適切な休息を与えることを求めています。権限は記録を 免除するのではなく、後で行うことを一つ増やします。

記録には船長と船員、二人の署名が必要です

記録の要件は、様式と言語、写しの交付、署名まで定められています。

  1. Each Member shall require that records of seafarers’ daily hours of work or of their daily hours of rest be maintained to allow monitoring of compliance with paragraphs 5 to 11 inclusive of this Standard.

同じ項が続けて定めます。記録は権限のある機関が定めた標準様式で作成し、船内の使用言語と英語で 書きます。船員は自分に関する記録の写しを受け取り、その記録には船長(または船長が権限を与えた者) と船員の双方が署名します。STCW コード A-VIII/1 第 7 項も標準様式と写しの交付、双方の署名を 同じく求めています。ただし様式を定める主体は書いていません。

署名が二つであることが要点です。船員の署名がない記録は、様式が正しくても要件を満たしません。 そして写しを船員に渡したかどうかは記録そのものには残らないので、手続として管理する必要が あります。

掲示の義務も別にあります。船内の作業配置表を見やすい場所に掲示し、職務ごとに海上と停泊中の 勤務配置、および適用される労働時間の上限または休息時間の下限を記載します(A2.3 第 10 項)。この 表も標準様式で、船内の使用言語と英語で作成します(第 11 項)。

確認すべきこと

  • その船の旗国が労働時間の上限方式なのか、休息時間の下限方式なのか
  • 判定を暦日の合計で行っているのか、窓を動かして行っているのか
  • 違反を一種類で記録しているのか、五種類に分けて記録しているのか
  • 例外を適用した記録に旗国の根拠が付いているか
  • 記録に船員の署名が入っているか

MLC と STCW のこれらの規定は、版によって文言が異なることがあります。上の引用は MLC, 2006 (2022 年改正を含む統合版)と STCW コードマニラ改正(STCW/CONF.2/34)から取りました。旗国がより 厳しい基準を定めている場合は、その基準が優先します。

Bellbook は休息時間をローリング窓で検査し、違反の種類を分けて示します

船員が船上で 30 分刻みで入力すると、24 時間と 7 日のすべての窓を走査して最小休息を求めます。10 時間・77 時間・分割回数・6 時間の区間・14 時間の間隔をそれぞれ別に判定します。記録のない区間はゼロで埋めず、判定を保留します。

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