閉鎖区域の進入許可証に署名する前に終えておくべきこと(MSC.581(110))

IMO海上安全委員会は2025年6月27日、決議MSC.581(110)で閉鎖区域進入の勧告を改正しました。決議は従前のA.1050(27)を廃止するよう総会に要請します。勧告なので、それ自体に強制力はありません。ただし決議の前文が想起するとおり、SOLAS規則III/19.3.6の進入・救助訓練と規則XI-1/7の大気測定器の備付けは条約上の義務です。
勧告の順序は明確です。登録簿を作り、リスク評価を行い、大気を測定した後に許可証が出ます。許可証はその前の仕事が終わったことの確認であって、その仕事を代わりに済ませる書類ではありません。
この記事は、許可証に署名する前に終えておくべきことを勧告本文の順に見ます。定義、登録簿とリスク評価、発行権限と有効時間、四つの測定値、進入中の規則、そして付録の様式の署名欄です。
閉鎖区域は三つの特徴のうち一つでもあれば該当します
2.1 Enclosed space means a space which may contain a hazardous atmosphere or lack of oxygen and has any of the following characteristics: .1 limited openings for entry and exit; .2 inadequate ventilation; or .3 not designed for continuous human occupancy.
条件はany of the followingです。三つすべてを備える必要はなく、一つでもあれば閉鎖区域です。条文は貨物倉、ビルジ、バラストタンクその他のタンク、ポンプ室、チェーンロッカー、機関のクランクケースを例に挙げます。
2.2項と2.3項は連結区域と隣接区域を別に定義します。扉一つでつながった区画は水密扉であっても連結区域とみなし、測定で証明されるまで危険な大気を含んでいると扱います。
人の役割は三つです。
2.6 Responsible person means a person in a management level on board a ship (i.e. master, chief mate, chief engineer officer or second engineer officer) of competency and authorized by the shipping company to permit entry into an enclosed space. 2.7 Attendant means a person maintains a watch over those entering the enclosed space, to maintain communications with those inside the space and to initiate the emergency procedures in the event of an incident occurring.
責任者は管理級の職員のうち、会社が進入許可の権限を与えた者です。監視員は入口で内部を見守り、連絡を維持し、非常手順を開始する者です。2.5項の適格者(competent person)は、危険な大気が存在する可能性を判断できる運航級の能力を持つ者です。三つは役割であって職名ではありませんが、監視員は入口を離れることができません。
登録簿とリスク評価が許可証より先です
4.1 The company should ensure that a risk assessment is conducted to identify all enclosed spaces on board the ship and that the identified enclosed spaces are recorded in the Enclosed Space Register, which should be maintained on board the ship as well as ashore.
リスク評価の第一の目的は、船にある閉鎖区域をすべて見つけることです。結果は閉鎖区域登録簿に記録し、船内と陸上の両方に置きます。4.2項は登録簿に入る項目を十二挙げます。区画の配置と出入口、物理的危険、隣接区域との連結、換気設備と安全な進入までにかかる換気時間、測定手段、施錠と標識、救助装備です。
4.8 Throughout the assessment process, there should be an assumption that the space to be entered is considered as hazardous until positively proved to be safe for entry.
評価の出発点は危険だという前提です。安全だと積極的に証明されるまで、その区画は危険な区画です。4.5項は評価の結果を三つに分けます。健康と生命への最小限のリスク、今はないが作業中に生じうるリスク、そして特定されたリスクです。三つめなら第9節の追加措置が付きます。陽圧式呼吸具と救助用ハーネスがそれです。
許可は船長または指名された責任者が発行し、8時間を超えません
5.1 No person should open or enter an enclosed space unless authorized by the master or a responsible person nominated by the master and the appropriate safety procedures laid down for the particular ship have been followed.
開けることも対象です。open or enterです。マンホールの蓋を開ける行為から許可の対象になります。権限は船長または船長が指名した責任者にあります。
The validity of the permit should be specified based on the risk assessment and should never be longer than eight hours.
5.2項です。有効時間はリスク評価から出しますが、8時間を超えることはできません。付録2の注1はもう一つ書いています。進入者が区画を出て無人にすると許可証は無効になり、再点検が必要です。食事の時間に空けた区画へ同じ許可証で再び入ると、この注に引っかかります。
5.3項は他の許可証が重なりうると書いています。エネルギー隔離、電気隔離、火気作業、高所作業の許可がそれです。閉鎖区域の許可証一枚でそれらの作業は許可されません。
進入前の測定値は四つで、換気を止めた状態で測ります
7.4 After completion of a suitable risk assessment targeted to the space to be entered steady readings of all of the following should be obtained: .1 20.9% oxygen by volume; .2 the level of carbon dioxide has been checked and is less than 0.5% by volume (5,000 ppm); Note: National requirements may differ when determining the safe atmosphere range for gases stated above. .3 less than 1% of lower flammable limit (LFL) on a suitably sensitive combustible gas indicator, where the assessment has determined that there is potential for flammable gases or vapours; and .4 less than 50% of the occupational exposure limit (OEL) of any toxic vapours and gases.
| 項目 | 進入できる測定値 | 備考 |
|---|---|---|
| 酸素 | 20.9%(容積) | 通常の大気と同じ値 |
| 二酸化炭素 | 0.5%未満(5,000 ppm) | 国の要件が異なることがある |
| 可燃性ガス | LFLの1%未満 | 評価で可燃性の可能性があるとき |
| 毒性ガス・蒸気 | OELの50%未満 | 測定対象のガスは評価で定める |
酸素の基準が範囲ではなく20.9%という一つの値である点を見ます。6.5項の.3は、20.9%未満であれば、可燃性・毒性ガスが低い水準であっても第9節の安全でないと知られ、または疑われる区画として扱うよう言います。7.7項は、可燃性や酸素の測定が毒性の測定の代わりにならないと明記します。
7.6 Any gas testing should be carried out with ventilation to the enclosed space stopped, and after conditions have stabilized, in order to obtain accurate readings.
測定は換気を止め、大気が安定した後に行います。換気中に測れば送り込まれた空気を測ることになり、区画の大気を測ることにはなりません。付録2の注2は、進入前の測定の前に換気を約10分止めるよう書いています。7.5項は、条件が満たされなければ追加換気の後に再測定し、すべて満たされたときだけ進入を許します。
単独進入は禁止され、監視員はいかなる場合も先に入りません
3.11 The company should ensure that single person entry into an enclosed space is not permitted.
会社が確保すべきことと書かれています。ちょっと確認するだけという進入が船で許されないようにするのは、会社の仕組みです。
8.5 In the event of an emergency, under no circumstances should the attendant enter the space before help has arrived and the situation has been evaluated to ensure the safety of those entering the space to undertake rescue operations. Only properly trained and equipped personnel should perform rescue operations in enclosed spaces.
監視員が倒れた同僚を見て入ることが、条文が止める行為です。under no circumstancesです。11.1項は同じことを船内の全員と陸上の要員に広げます。救助のための進入は、合意された救助計画に従ってのみ行います。11.2項は、入りたいという衝動が大きいことを条文の中に書いておき、その衝動は常に抑えなければならないと言います。
8.3項は、換気が止まったら中にいる者は直ちに出るよう言います。休憩後の再進入の前には大気を測り直し、結果を記録します。
付録の様式は三人の署名で閉じます
付録2の許可証の例は五つの節でできています。第1節は船長または指名された責任者が点検する進入前の準備です。換気、隔離、四つの測定値、救助装備、監視員の指定、当直職員への通知、通信の試験がここにあります。第2節は進入者それぞれが確認する欄です。許可を受けたか、第1節が終わっているか、報告間隔を何分と合意したかを書きます。第3節は安全でないと知られ、または疑われる区画用で、責任者と進入者が一緒に点検します。
第1節から第3節までが終わると、船長または指名された責任者、監視員、進入者がそれぞれ日付と時刻を書いて署名します。第5節は作業完了後に責任者が閉じます。作業完了、区画の再封鎖、当直職員への通知の時刻が入ります。
THIS PERMIT IS RENDERED INVALID SHOULD VENTILATION OF THE SPACE STOP OR IF ANY OF THE CONDITIONS NOTED IN THE CHECKLIST CHANGE
様式の下部の文です。換気が止まるか、チェックリストの条件のどれか一つでも変われば許可証は無効です。8時間が残っていてもそうです。
確認しておくこと
上の引用はMSC.581(110)の附属書から取りました。決議は、各国政府が船舶所有者・船員・港にこの勧告を周知し適用を促すよう要請する形式です。旗国の法令や会社のSMSがより厳しい基準を置くなら、そちらに従います。
測定値の注が言うとおり、安全な大気の範囲は国の要件が異なることがあります。3.9項は、会社の内部監査と主管庁の外部監査がこの手順の遵守を確認するようにします。この記事は決議本文と付録1・2までしか扱わず、船種別の貨物の危険を書いた第10節は扱いません。
引用した原文を直接確認できます
以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、実際の適用前にその後の改正と旗国の実施要件を確認してください。
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勧告の順序は、リスク評価が終わった後に許可証が出ることです。Bellbookは作業ごとのリスク評価に承認と有効期間を置き、進入許可証のような書類の様式を船上で作成して確認者が確かめる流れとして残します。
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