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水先人と港湾当局の異常報告がPSC検査につながる経路(EU指令2009/16第23条)

EU指令2009/16の第23条は、水先人と港湾当局が船で見た異常を寄港国の権限のある機関に報告するよう求めます。報告はその場で終わりません。附属書Iの予期しない要因になって追加検査を開き、附属書Vの明白な根拠の例になって詳細検査につながります。

この経路を知らなければ、検査がなぜ来たのかが分かりません。リスクプロファイル上は検査の時期がまだ先なのに検査官が乗ってくるなら、入港時の水先の間に報告された異常が出発点かもしれません。報告に入る情報が何かを知って初めて、船の側で何を説明するか準備できます。

適用範囲: この指令は、EU加盟国の港と錨地に寄港する船に適用される地域制度です。第23条の報告義務は、加盟国が自国の水先人と港湾当局に課す義務であり、船に直接掛かる義務ではありません。世界共通の義務ではなく、EUの港で働く手続です。

水先人は寄港国または沿岸国の機関に直ちに知らせます

  1. Member States shall take appropriate measures to ensure that their pilots who are engaged in the berthing or unberthing of ships, or who are engaged on ships bound for a port or in transit within a Member State, immediately inform the competent authority of the port State or the coastal State, as appropriate, whenever they learn in the course of their normal duties that there are apparent anomalies which may prejudice safety, including the safe navigation of the ship or the safety of seafarers on board, or which may pose a threat of harm to the marine environment.

報告の主体は水先人です。着岸と離岸を担う水先人だけでなく、加盟国の港へ向かう船と加盟国の中を通過する船に乗る水先人も含まれます。受け取る側は、状況に応じて寄港国または沿岸国の権限のある機関です。

報告の対象はapparent anomaliesです。安全を損なうおそれのある異常、その中でも船の安全な航行と船員の安全を損なうおそれのある異常、そして海洋環境に害を及ぼすおそれのある異常です。時点はimmediatelyです。水先人が通常の業務の中で知ったときに直ちに知らせます。

この項と第2項には統合版で▼M6の印が付いています。指令2024/3099で変わった文言です。加盟国がその改正を国内法に移したかどうかは、その寄港国で確認します。

港湾当局は自分の港の中の船を報告します

  1. If port authorities or bodies, in the course of their normal duties, learn that a ship within their port has apparent anomalies which may prejudice safety, including the safe navigation of the ship or the safety of seafarers on board, or which may pose a threat of harm to the marine environment, such authority or body shall immediately inform the competent authority of the port State.

二つ目の報告の主体は港湾当局と港湾機関です。水先人と同じ種類の異常を同じ時点で知らせます。違いは範囲です。港湾当局は自分の港の中にいる船を見ます。受け取る側も寄港国の権限のある機関一つに定まります。

両項とも、報告の主体が検査官ではないことが重要です。水先人と港湾当局は検査をしません。通常の業務の中で見たものを伝えるだけです。判断は受け取った機関がします。

報告には三つのまとまりの情報が入ります

  1. Member States shall require pilots and port authorities or bodies to report at least the following information, in electronic format whenever possible: — ship information (name, IMO identification number, call sign and flag), — sailing information (last port of call, port of destination), — description of apparent anomalies found on board.

第3項は報告の最小限の内容を定めます。可能な限り電子形式で送ります。

まとまり 入る項目
船舶情報 船名、IMO番号、呼出符号、旗国
航海情報 直前の寄港地、目的港
異常の内容 船内で見つけた異常の記述

航海情報に目的港が入っています。報告を受けた機関は、この船が次にどの港へ行くのかを知ります。異常がその港で検査として戻ってくる理由です。

加盟国は後続の措置をとり、記録します

  1. Member States shall ensure that proper follow-up action is taken on apparent anomalies notified by pilots and port authorities or bodies and shall record the details of action taken.

報告は受けて終わりではありません。加盟国は報告された異常に適切な後続の措置をとり、どのような措置をとったかの詳細を記録しなければなりません。後続の措置が何であるかはこの項は定めません。検査であることもあれば、別の措置であることもあります。

第5項は欧州委員会に実施権限を与えます。水先人と港湾当局の異常報告の手続と、加盟国の後続措置の報告の手続を調和させる措置です。報告の様式と手続が加盟国ごとに異なりうるということであり、共通の手続は実施法令で確認します。

報告された船は予期しない要因として追加検査の対象になります

Ships which have been reported by pilots or port authorities or bodies as having apparent anomalies which may prejudice their safe navigation or pose a threat of harm to the environment in accordance with Article 23 of this Directive. Those reports may include information from Vessel Traffic Services about ships’ navigation.

附属書I第II部2Bは予期しない要因の一覧です。第23条に従って報告された船が、その一覧に一行として入っています。報告には船舶交通業務の航行情報が含まれることがあります。水先人が見ていない航跡も報告の一部になりうるということです。

予期しない要因が生じれば、第11条(b)に従って、直前の定期検査からどれだけ経っていても追加検査ができます。ただし、しなければならない義務ではなく、できるという裁量です。

ships to which unexpected factors listed in Annex I, Part II 2B, apply may be inspected. The decision to undertake such an additional inspection is left to the professional judgement of the competent authority.

第12条はこの裁量を選定の仕組みに入れます。義務的な検査の対象は優先度Iで、検査できる船は優先度IIです。予期しない要因はmayでつながれるので、優先度IIの側に置かれます。検査するかどうかは権限のある機関の専門的判断に委ねられます。

報告された船は詳細検査の明白な根拠の例にも入ります

A more detailed inspection shall be carried out, including further checking of compliance with on-board operational requirements, whenever there are clear grounds for believing, after the inspection referred to in point 1, that the condition of a ship or of its equipment or crew does not substantially meet the relevant requirements of a Convention.

第13条第3項は、初回検査の後に明白な根拠があれば詳細検査を行うよう求めます。明白な根拠は、検査官が専門的判断で詳細検査が必要だと考える証拠を見つけたときに成り立ちます。その例が附属書Vにあります。

  1. Ships identified in Annex I, Part II 2A and 2B.

附属書VのA部の最初の項目が、附属書I第II部2Aと2Bの船です。第23条の報告で2Bに入った船は、この項目で明白な根拠の例にも入ります。経路は二段階でつながります。報告が追加検査を開き、同じ報告がその検査を初回検査から詳細検査へ広げることがあります。

段階 条文 効果
報告 第23条第1項・第2項 権限のある機関が異常を知ります
追加検査 第11条(b)・附属書I 2B 検査の時期と関係なく検査できます
詳細検査 第13条第3項・附属書V 明白な根拠の例として詳細検査が開きます

確認しておくこと

上の引用はEU指令2009/16の統合版の第11条、第12条、第13条、第23条と、附属書I第II部、附属書Vから取りました。この記事は統合版の本文までしか扱いません。

第23条第5項の調和された報告手続を定める実施法令は、ここでは扱っていません。予期しない要因で開いた検査が拡大検査になる条件は附属書I第II部3Bにあり、この記事の範囲外です。水先人の報告がどの機関に届くかは寄港国と沿岸国の組織によって異なるので、その国の実施法令で確認します。

引用した原文を直接確認できます

以下は、この記事で扱う文書の公式発行元へのリンクです。本文に記載した版と条項を照合し、EU法令については文書ページの統合版と改正履歴も確認してください。

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